2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370828
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
青木 敦 青山学院大学, 文学部, 教授 (90272492)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法典 / 宋代 / 近世 / 近世論 |
Outline of Annual Research Achievements |
地方法典が生み出されるに至った背景として、唐末から宋初の敕、格敕、敕令格式などが生まれてくる過程を、個々の条文の変化・受け継がれに即して明らかにした。また、この時代を17世紀に始まる近世以前の時代の制度的な特徴と捉えることにより、ことに近世論においても進展があった。これらの結果を、5月4日中国・上海師範大学における中国語単独講演2回、6月10日韓国・慶北大学校法科大学における英語講演、8月2日台湾大学における中国語研究発表、8月9日日本・明清史研究夏合宿における日本語コメント、10月22日台湾・中央研究院台湾史研究所における中国語単独講演、10月23日台湾・中央研究院台湾史研究所におけるシンポジウムでの中国語発表、3月15日台湾大学における中国単独講演において発表し、意見交換を行った。また3月に論文集(共著)を一冊編集・出版した。 ことに、時代論としての近世については、従来、内藤湖南以来宋代を近世とする説が宋代史研究者の間において強かったが、1990年代のS. Subramanyam, A. Reid, V. Libermanらの研究を参照し、岸本近世論を補強する方向で宋代史を見直した。 またこうした過程を、J. H. Elliott, Randolph Starn, Theodore K. Rabbらの17世紀危機論、R.Huttonらの中世論、ケンブリッジ大学のPhil Withington, William Johnsonらの近世論とすり合わせることによって、Early Modern, Fruehe Neuzeit, Fruehmoderne,「近世」といった語の穏当な利用法について多角的に見当を行い、地方法典の生み出された宋代は近世とも中世とも古代とも何とも言えない時代であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に、ことに近世論方面で、海外講演7回、専門書編集1冊などの成果があがった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り進んでいるので、2017年度には最終的に、慶元条法事類の雑勅を中心に法令(敕・令)の復元を行い、また特別法の位置づけを行う。さらに、法令が発布された背景としての地方行政制度を明らかにすべく、南宋・金・元の地方行政機関を、様々なデータを用いて横断的に整理するとともに、出土官印の、行政職が記された印面、発行機関・発行年月が刻まれた側刻数百件を整理し、文献さらには碑文と対象させて、再構築する。その過程を5月4日に台湾・政治大学において発表し、さらに論文2本にまとめる。 この過程では、印面・側刻、さらには出土地点や出土年月、所蔵などの整理に膨大な作業を必要とするところから、大学院生4名、学部生3名をアルバイトとして用い、データ化してこれを進める。また、関連文献の購入および他大学から印譜を取り寄せる必要があり、それを図書館に依頼して進行させる。こうして得られた結果は、官印製造について宋においては中央政府が一元的に把握しており、また金も貞祐年間までは中央の官衙(次第に礼部となる)が行っていたが、貞祐3年以降は行尚書六部ことに行宮礼部を中心とした地方機関が行うようになり、徐々に蒙古との臨戦態勢に適合的な制度が整えられていった過程を示すものと予想される。この事実と、地方法典の編纂を合わせて考えることにより、例えば中央集権であるとか地方分権であるとかいった二分法的な枠組み、あるいは単に唐、明に至って中央集権が進んだという従来の見方を、より実際的な行政組織理解に転換させる予定である。
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Research Products
(13 results)