2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀末から20世紀初頭におけるトルコの音響文化
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26370831
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
松本 奈穂子 東海大学, 教養学部, 准教授 (20453706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 雄三 公益財団法人東洋文庫, 研究部, 研究員 (20014508)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 演劇 / 音楽 / 祝祭 / オスマン朝 / 台本 / トゥルアート / 楽譜 / カント |
Outline of Annual Research Achievements |
演劇関連(担当:永田)東京外国語大学所蔵のオスマン演劇台本31冊の内容を確認、全ページの電子データを作成し、来年度の調査に向けての基礎を固めた。この台本は、まず当時書かれた写本であること自体に大きな価値があるだけではなく、当時を代表する俳優・演出家による芝居であること、共和国発足まもないころにイスタンブル警察署の検閲の結果「上演してもよろしい」との許可印が押されていること、電子データの質が大変良いこと、当時「即興劇(トゥルアート)」と呼ばれた演劇においても検閲のために台本が作成されていたことなど、きわめて重要な史料であることが確認された。 音楽関連(担当:松本)オスマン朝末期の西洋音楽導入概要を把握し、同時期の音楽情報として重要な資料となる楽譜および音楽関連雑誌の収集をアタテュルク図書館およびイスタンブル大学希少書図書館を中心に行った。後者にはユルドゥズ宮殿から移管された楽譜が数多く収められているため、継続調査予定である。 オスマン朝末期の五線譜による楽譜は、出版時期によりピアノ伴奏付や旋律のみのトルコ古典音楽譜などに大別され、音程を示す記号の工夫の変化なども見てとることができる。和声づけされた楽譜では『マールマート』誌付録楽譜も含め、ハジュ・エミン・エフェンディの楽譜群が重要である。収集資料より、行進曲が多いことに着目し、約80曲を年代別にまとめた結果、スルタンへの献呈曲や時の主要テーマが多くとりあげられている傾向が見てとれた。さらに多くの行進曲が存在するので、引き続き収集・分析を行う。 オスマン朝末期からトルコ共和国初期にかけて重要な約割を果たした旋律学校出版のトルコ古典音楽を収集した旋律学校全集は解読を終え、同学校の他の楽譜や雑誌出版物とともに分析中である。 演劇・音楽いずれの資料確認作業でも、研究協力者ハティジェ・アイヌルの貴重なアドヴァイスを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
演劇に関して、東京外国語大学所蔵の演劇台本電子データ化と研究協力者ハティジェ・アイヌルとともに行った内容確認は、今後の研究を進めるうえでたいへん大きな進展であった。 音楽に関して、今年度収集予定であった音楽関連文献のうち、楽譜の収集と所蔵先の確認がかなり進んだことは大きな成果である。アタテュルク図書館からは『演劇と音楽』雑誌全号の電子複写を得た他、所蔵資料電子版公開により行進曲、カントなどの楽譜100種以上を収集できた。イスタンブル大学希少書図書館は所蔵文献を電子公開していないため、現地調査の結果、図書館側コンピュータの不調により閲覧が殆どできず待ち続ける状態でありながらも、和声づけされたピアノ譜を中心とした楽譜収集を若干行うことができた。ボアズィチ大学のギョヌル・パチャジュ氏からもオスマン音楽研究書で聞き取り調査を行うことができ、来年度以降も様々なアドヴァイスをいただくこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度より連携研究者で演劇を分担者とともにご担当いただく江川ひかり氏(明治大学)、研究協力者で祝祭を担当いただく奥美穂子氏(明治大学)の両名が参加することにより、オスマン朝末期からトルコ共和国初期におけるトルコの音響空間を、より多角的な視点から分析する。物売りの声など都市を彩る研究対象時期の様々な音響要素も、文献資料や視聴覚資料などから収集する。 来年度はイスタンブル大学希少所図書館に割く日程は、研究許可申請に要する機関や、先方での様々なアクシデントを勘案し、長めに調整する。アタテュルク図書館での音響関連資料収集も継続して行う。 引き続きシェヒル大学文学部教授ハティジェ・アイヌルからも協力を仰ぐ。
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Remarks |
「日本における中東研究文献データベース1989-2015」は著者名に永田雄三、松本奈穂子を入力すると業績一覧が表示される。
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Research Products
(5 results)