2015 Fiscal Year Research-status Report
『遼史』地理志の研究─出土資料と実地調査に基づく─
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26370845
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉本 智慧子 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (70331105)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 上京道 / 東京道 / 室韋王府 / 烏隗于厥部 / 抜里氏国舅大翁帳 / フルンボイル盟 / ヒンガン盟 / 墨書と石刻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題「『遼史』地理志の研究―出土資料と実地調査に基づく―」は、平成23~25年度科研費研究課題「『遼史』の再構築―契丹文墓誌を主資料として―」達成後の新資料の増加、研究の深化を踏まえ、『遼史』において最古の原資料を反映し、研究上の問題点も山積している地理志を対象として、中国内蒙古自治区東部、遼寧省西部、河北省北部における考古学的現地調査によって獲得された知見を活用することによって、単なる文献学的研究ではなしえない地理志の再構築を目指すものである。本年度においては、以下のような作業を進めた。 ①フルンボイル盟、ヒンガン盟ほぼ全域に遺された契丹遺跡を実地踏査し、あわせて遼金時代の墨書と石刻遺跡を調査した。 ②遼寧省北部における契丹抜里氏国舅大翁帳の本帳所在地において現地調査を行った。 ③中国・ロシアの辺境におけるアムール川とアルハラ川との合流点に赴き、実地調査を行った。 以上の作業によって、遼の上京道東部、東京道西南部所轄域内及び東京道室韋王府と烏隗于厥部所轄域内の契丹関連の遺跡に関する地理的、考古学的所在状況について豊富な知見を獲得し、次年度の研究の基礎を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は新発見の出土資料に恵まれ、契丹文字のモンゴルに対する最も早い記述である「萌古得」の解読を達成するなど一連の成果によって、平成20~22年度の科研費基盤研究課題「契丹語辞典の編纂」において作成した『契丹語辞典Ⅰ』につづく『契丹語辞典Ⅱ』即ち『契丹大字辞典』の編纂が完成した。さらに新出した遼代漢文墓誌に恵まれ、遼史学界において久しく未解決であった「永州」と「木葉山」及び「土河」と「黄河」の関係をも明らかにした。こうした重要な知見は、『遼史』地理志研究のみならず、広く東ユーラシア各民族史を対象とする研究にも大きく裨益することとなろう。
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Strategy for Future Research Activity |
調査範囲を陶猥思迭剌部所轄州県から契丹帝国の極東地域にまでに広げ、とりわけ文献資料にほとんど見えない女真諸部族と深い関係がある地域を重点に調査対象とする。 それと並行して、出土資料の収集・現地文物考古機関への訪問を行い、墓誌に記述される遺址の地理的方位に重点を置いて、『遼史』地理志と『金史』地理志の双方に記述をもつ部分を中心に検討を行う。
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Research Products
(4 results)