2016 Fiscal Year Research-status Report
「ホロコースト」後のアメリカ優生学運動と冷戦期政治文化の史的考察
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26370853
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
貴堂 嘉之 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (70262095)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 優生学運動 / 産児調節 / 冷戦 / ホロコースト / 家族計画 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦後のアメリカ優生学運動とその海外への伝播・発展過程を検証する本科研課題では、重点研究領域として、①ドイツの戦後処理とアメリカの関係、②アメリカ「帝国」領域における優生学的実践1(プエルトリコ、グアム、フィリピン)、③アメリカ「帝国」領域における優生学的実践2(日本(沖縄含む)、韓国、東南アジア、アフリカ)、④戦後アメリカ国内における断種実践、黒人貧困層を対象とした南部社会における福祉施策、など4つを設定した。 計画3年目にあたる平成28年度は、上記③アメリカ「帝国」領域における優生学的実践2を研究対象として作業を進めた。1)日本の優生保護法制定やGHQ占領下の性政策についての基礎文献の収集につとめるとともに、沖縄については、GHQ占領下で優生保護法が適用されないなかでの沖縄の生殖の歴史を描いた『戦後沖縄の生殖をめぐるポリティクスー米軍統治下の出生力転換と女たちの交渉』の著者、澤田佳世氏との研究交流をすすめた。2)韓国や東南アジアについては、基礎的な史資料の収集につとめた。3)冷戦下のアメリカの生殖政策の第三世界への輸出に関して、アフリカを含むグローバル・ヒストリーの文献の収集につとめ、研究を進めることができた。 また、平成27年度は計画していた海外調査を延期していたが、平成28年度はニューヨークにて史料収集する機会をえた。そこでは平成27年度の研究対象であった、プエルトリコやグアムに関する生殖・医療関係の一次史料をも収集することができた。また、アメリカにあるホロコースト博物館としてまだ訪問していなかったMuseum of Jewish Heritage-a living Memorial to the Holocaustを見学し、学芸員の方々と交流することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に重点的に検証するアメリカ合衆国の「帝国」領域である戦後日本、韓国、東南アジアにおける優生学的実践を扱った研究書、史資料の収集はほぼ計画通り、達成することができた。アフリカについても、第三世界開発の関連で資料を一部集めたが、網羅的に収集することはできなかった。次年度も継続的に、冷戦期のグローバルな展開については、史料収集に努めることにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本科研課題で重点研究領域として設定した、①ドイツの戦後処理とアメリカの関係、②アメリカ「帝国」領域における優生学的実践1(プエルトリコ、グアム、フィリピン)、③アメリカ「帝国」領域における優生学的実践2(日本(沖縄含む)、韓国、東南アジア、アフリカ)、④戦後アメリカ国内における断種実践、黒人貧困層を対象とした南部社会における福祉施策、の4つの領域のうち、①②③については平成26年度から28年度にほぼ達成されたので、平成29年度は④の戦後アメリカ国内における断種実践を集中的に検証する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、アメリカ海外調査を含めて研究計画通りに、研究を実施することができたが、前年度からの繰り越し分(452433円)もあり、繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の繰り越し金は、平成29年度の研究計画における海外調査を見直し、滞在期間を若干、長期化して、史資料の渉猟を実施する。
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