2016 Fiscal Year Research-status Report
社会政策国家の政治文化史―ニューディール期前夜のアメリカ合衆国
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26370854
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
松原 宏之 立教大学, 文学部, 教授 (00334615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 社会政策 / 政治文化史 / ジェンダー史 / アメリカ合衆国史 / 医療史 / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の第二の柱にあたる全米国防会議National Council of Defenseの調査に着手した。糸口は、女性委員会Women's Committeeと通称される組織における、女性民間団体が第一次世界大戦にいかなる関与を果たしたかになる。昨年度まで中心的に検討してきた訪問看護婦運動と踵を接するような活動であり、ニューディール期前夜の様相を立体的に把握するための準備となる。当初9月を予定していた現地調査が3月にずれこんでしまったが、文献調査を先行させて、3月の国立公文書館での史料収集は満足のいくものであった。 先行研究において、全米国防会議は総力戦体制を支えて国家機構の整備を進めたとされる。この傘下にあって、女性委員会はその一翼を担ったものとしてごく簡単に位置づけられ、研究も必ずしも多くない。しかしながら、ジェンダー史と政治文化史の観点を加えて史料を読み直すなら、ことはやや複雑だったようにも思われる。女性委員会のなかにある複数の部局、および連邦と州以下のレベルの関係はさらなる検討の価値を感じさせる。新年度の課題である。 なお、平体由美・小野直子編著『医療化するアメリカ―身体管理の20世紀』(彩流社、2017年)に論文「ヘンリー通りセツルメントと医療、社会、政治―二〇世紀転換期ニューヨーク市における「訪問看護」の現場から」を寄稿して、検討を進めた。医療史研究との接点がより豊かになったことで、福祉国家体制を考察する際の視角もまた増えたように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査の実施が半年ほど遅れて、収集した史料の検討に取り組んでいるところである。もっとも文献調査は順調に進捗しており、遅れは軽微である。今年度前半のうちに当初計画していた程度まで追いつけるであろうと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたって、調査の仕上げに取り組むことになる。 5月末から二週間にわたって招聘するLisa McGirrとの連続講座で、この間の研究成果の中間的な取りまとめを討議に付したい。本科研最後の現地調査とともに、ソーシャルワークと社会福祉(社会政策)制度とが第一次世界大戦期とその後にかけていかなるかたちを取るのかを検討する。
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Causes of Carryover |
史料調査を三月に実施したため、会計処理上の理由で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3月に国立公文書館で実施した史料調査費用が新年度会計からまかなわれる。9月に別途現地調査を予定しており、繰越額と今年度請求額と合わせて、旅費・資料購入費として使用する。
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Research Products
(1 results)