2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Cultural History of the Welfare State: Before the New Deal Order
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26370854
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
松原 宏之 立教大学, 文学部, 教授 (00334615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 福祉国家 / ジェンダー / 政治文化 / 総力戦 / 第一次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ合衆国における社会政策国家(福祉国家)形成の「前夜」とされてきた第一次世界大戦期から1920年代までを検討するのが本科研である。基礎にあるのは、時間軸を伸ばすことで、集権化には収斂しきらない動態を描けるのではないかという仮説である。 最終年度の大きな課題は、昨年度にひきつづき、全米国防会議National Council of Defenseの実態に迫ることであった。アメリカの第一次大戦参戦に先立つ1916年設立のこの半官半民組織は、軍需品調達、食料を含む民間資材の調達、輸送や労働力の配置、そして国内社会の士気の維持を任務とした。総力戦体制の構築を担ったと言える。 しかし、同会議の実務を請け負った女性委員会Woman's Committeeに即して見ていくと様相は複雑である。収集史料の検討から浮かび上がるのは、この全米国防会議を支えた広範な民間団体の役割であり、ただちに連邦政府の意向に服従したわけでない数々の思惑である。国立公文書館(カレッジパーク)所蔵史料からうかがえるのは、諸州の多彩な組織との調整に苦心する女性委員会本部であり、そのあつれきから垣間見える戦時の短期的要求にとどまらないより長期の社会的要請であった。 こうした発見と考察について、2017年6月に立教大学で開催した国際ワークショップで検討の機会を持てたことは幸いであった。ハーバード大学歴史学部のLisa McGirr博士を招いた連続ワークショップの一環として企画し、社会政策国家の形成過程について忌憚のない研究会となった。本科研4カ年の総括を進め、その成果については2018年8月にふたたびMcGirr博士との研究会を予定している。
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