2015 Fiscal Year Research-status Report
戦後ユダヤ世界の形成とパレスチナ問題の「否・解決」--学際的研究をめざして
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26370855
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
野村 真理 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20164741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 彩佳 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (40409579)
金城 美幸 東京大学, 東洋文化研究所, 研究員 (80632215)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ユダヤ人 / パレスチナ問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の「実施状況報告書」の「今後の研究の推進方策」欄で書いたように、諸般の事情により、当初計画では今年度に予定された3人そろってのエルサレムでの史料調査・収集が不可能になった。そのためヨーロッパからパレスチナへの「人の移動」を担当する研究代表者の野村は、ルーマニアのユダヤ人DP関係資料・史料の読み込みを進めると同時に、旧ルーマニア領ベッサラビアのキシニョフおよびルーマニアのヤシで、おそらく最初の日本人研究者としてユダヤ人コミュニティを訪問し、ホロコースト後のコミュニティの再建ならびにイスラエルへの移住状況に関してインタビューを行った。また、本科研費による研究成果を「ホロコーストとルーマニア」前篇および後篇としてまとめ、『金沢大学経済論集』第36巻第1号、第2号に発表した。 ドイツからパレスチナへの「モノの移動」担当する研究分担者の武井は、本科研費研究にも関連して、ドイツとイスラエルの和解について調査する日本記者クラブ取材団に専門家として同行し、ドイツ・イスラエルの和解とパレスチナ問題との関連に関してインタビューを行う貴重な機会をえた。現在、研究成果を著書としてまとめる作業に取り組んでいる。 本年度から研究分担者になった金城は、エルサレムでの史料調査を断念し、これまでに収集した史料をもちいて、シオニズムにおける植民地主義とナショナリズムの相互影響関係と構造化の過程について理論的分析を行い、「研究発表」欄に記載した論文を執筆した。 本研究は、最終目標としてヨーロッパのユダヤ人近現代史とパレスチナ研究とを架橋する学際的研究の構築をめざしているが、今年度もイスラーム地域研究東京大学拠点パレスチナ班が主催する研究会に参加し、今後の研究ネットワーク形成のための情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「人の移動」を担当する野村は、①ルーマニア・ユダヤ人DP問題の発生事情を明らかにすることと、②パレスチナ/イスラエルに渡ったユダヤ人DPの戦略的入植と定住状況の精査を研究目的としているが、当初計画で今年度に予定されていたエルサレムでの史料収集ができなかったため、②の課題に関して研究に遅れが生じている。 「モノの移動」を担当する武井は、①欧米のユダヤ人社会からイスラエルに流れた寄付金とパレスチナ人の土地収用の関係と、②欧米各国政府によるイスラエルへの借款の規模とイスラエルの軍備拡張の関係の分析を研究目的としているが、同じく今年度に予定されていたエルサレムでの史料収集ができなかったため、①と②の課題の後半部分に関して遅れが生じている。 今年度から研究分担者になった金城は、今年度、単独でエルサレムに行き、野村の②の課題と武井の①、②の課題の後半部分に関して史料収集をする予定であったが、乳幼児を抱える身で予定した時期に海外渡航が不可能となり、このことも、研究全体の進捗状況の遅れに大きく影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本科研費研究の最終年度にあたる。そのため、当初の研究計画を見直し、来年度中にきっちり研究成果を出せる課題と、本科研費研究終了後も研究を継続する課題にわけて研究を推進する。 野村は、「現在までの達成度」欄で述べた①ルーマニア・ユダヤ人DP問題の発生事情を明らかにすることと、②パレスチナ/イスラエルに渡ったユダヤ人DPの戦略的入植と定住状況の精査の二つの研究目的のうち、①の完成をめざし、②を継続研究課題とする。①については、昨年度に続き、研究成果を論文にまとめるとともに、ユダヤ人DPの集合地となった第二次世界大戦までのドイツ領シュレージエンの調査を行う。 武井は、同じく「現在までの達成度」欄で述べた①欧米のユダヤ人社会からイスラエルに流れた寄付金とパレスチナ人の土地収用の関係と、②欧米各国政府によるイスラエルへの借款の規模とイスラエルの軍備拡張の関係の分析という二つの研究目的のうち、それぞれ前半部分の完成をめざし、イスラエル現地にかかわる後半部分を継続研究課題とする。前半部分については、ドイツで史料収集を行うとともに、研究成果をまとめて『和解のリアル・ポリティクス――ドイツ人とユダヤ人』(仮題)を出版する予定である。 金城は、来年度こそはエルサレムに出かけ、野村の研究目的の②と武井の①、②の研究目的の後半部分に関係する史料の調査を行う予定である。金城の史料調査の成果を踏まえ、野村、武井、金城で、今後の継続研究課題の研究計画をたてることになる。 イスラーム地域研究東京大学拠点パレスチナ班が主催する研究会には、今年度も積極的に参加する。
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Causes of Carryover |
野村は、海外での調査期間を予定より早めにきりあげざるをえなかったため、当初予定された海外出張費と実際に使用した海外出張費の差額が次年度使用額となった。 金城は、乳幼児2人を抱える身で、海外調査を予定した時期に身動きができなくなり、海外出張費が次年度使用額にまわった。子供をもつ若手女性研究者には、このような事態が発生することが多々あり、理解が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野村は、次年度に繰り越した研究費は書籍購入費と国内での研究会参加旅費に使う予定である。 金城は、次年度11月頃にエルサレムへの出張を予定し、次年度に繰り越した研究費はそのための旅費に使う予定である。
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