2015 Fiscal Year Research-status Report
中・近世のアルプス諸地域におけるローカル・コミュニティと国家の比較研究
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26370857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (80122365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コミュニティ / コミュニケーション / アルプス / 境界 / 国家 / ローカル / インターローカル / 比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
トレントのイタリア・ドイツ史研究所のシンポジウムの成果、Communities and Conflicts in the Alps from the Late Middle Ages to Early Modernityに掲載された英文論文において、アルプス諸地域の共同体間関係と国家形成の相互関連についての比較史的な概観を行うことができた。 スイス連邦のグラウビュンデンにおける15世紀のローカル・コミュニティの相互関係を明らかにするために、9月にはグラウビュンデンの州都クールの州立文書館において、昨年に続き、文書調査を行った。またグラウビュンデンの諸同盟と、ヴィスコンティ国家(ミラノ)の関係を明らかにするために、グラウビュンデン南部、ポスキアーヴォ渓谷共同体から、15世紀にはミラノ領であったテリーナ渓谷への渓谷と峠(ベルニナ峠)の交通路の現地調査を行った。9月の調査の最後には、ミラノ・ビコッカ大学の研究協力者マッシモ・デッラ・ミセリコルディアと研究課題遂行について意見交換した。 12月には、佐藤公美甲南大学准教授の企画するシンポジウム「アルプスからのインターローカルヒストリー」(於甲南大学、2015年12月20日)において、ゲストスピーカーであるマッシモ・デッラ・ミセリコルディアの滞在費の一部を負担することにより協力し、またこのシンポジウムでコメンテータの役割を果たし、基本的に本研究課題と重なるところの大きいこのシンポジウムをサポートした。このシンポジウムの成果は年度末に刊行された。 2016年1月末にはスイス=イタリア大学(スイス、メンドリジオ)のアルプス史研究室主催のワークショップ「6日の労働日のために-前工業化社会における企業と収益ー」に招聘をうけて、中世後期のティロル、上イン渓谷における放牧地の共同利用についての発表を行った。このワークショップの成果も刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローカル・コミュニティの間の相互関係による政治的、広域的秩序形成を明らかにするうえで最も重要な地域であるアルプス中部、南部について文書館調査と実踏調査を行い、いくつかの重要な未刊行資料を撮影、転写することができた。また国際ワークショップにおいて、15世紀のミラノ国家とスイス盟約者団、ハプスブルク(ティロル)の「国際関係」が、境界地域における共同体間の紛争・調停・平和の関係と密接な相互関係にあったこと、換言すればローカルからインターローカル(あるいはインターナショナル)な紛争と平和の相互関係へと連動・展開する可能性を帯びていたとの認識を共有することができた
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Strategy for Future Research Activity |
西アルプス諸地域におけるローカル・コミュニティの特質と、アルプスを含む地域国家(サヴォア、ヴァリスなど)の形成との間の相互関係を明らかにし、アルプス中部、東部との比較を行う。ただしこの地域については、未刊行史料の調査、利用が短期間では難しく、現地調査と刊行史料や研究文献への依存は避けられないであろう。 28年度は最終年度であり、アルプス諸地域全体の比較から、共同体間関係の展開と国家統合のインタラクティヴな関係、そしてこうした共同体間同盟の政治的動向を規定するローカル・エリート集団に焦点をあてて、あらためて比較考察と総括を行う。
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Research Products
(7 results)