2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative study of the local comunity and the state in medieval and early modern alpine regions
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26370857
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (80122365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アルプス / 国家 / コミュニティ / グラウビュンデン / ティロル / コミュニケーション / サヴォワ / 紛争解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
8月にはまずスイスのグラウビュンデン州の国立文書館で15世紀の渓谷共同体の同盟関係に関する未刊行文書の調査を行い、「共同体・同盟的国制」の史料的確認を行った。次いでフランス、サヴォワ県のシャンブレ県立文書館で西アルプス(ローヌ・アルプス)に関する史料調査を行った。中世後期のサヴォワ伯のアルプス地域支配の基盤であるシャテルニーにおいて役人が作成した大量の財務報告等を閲覧し、西アルプスの国家と社会の特質を把握した。イタリア側からモンジュネーヴル峠越えでフランス側に入る実踏調査により、比較的開けた渓谷と、通過にさほど大きな困難を伴わない峠を挟む西アルプス地方の地理的環境が中世後期の国家と社会の関係に与えた影響を明らかにすることができた。すなわちアルプス諸地域の国家と地域社会の比較史的研究という当初の計画で構想したように、峻厳な山嶺を多く含むスイス南部、東南部、とりわけグラウビュンデンではクール司教、ティロル伯、ミラノ(ヴィスコンティ、スフォルツァ家)らの相互に競合する勢力は、現地の共同体連合との交渉により緩い支配権を確保するにとどまり、他方、西部のサヴォワ~ピエモンテでは君主(サヴォワ伯/公)は下級貴族を行財政の責任者(役人)に任じて、より直接的な地域(農民共同体)の支配を行った。加えて2015年度のスイス、メンドリジオのスイス・イタリア大学アルプス史研究室主催の研究集会での報告を2本の英語、ドイツ語論文にまとめ、ここでは中世後期ティロルにおける農民共同体の放牧地、資源をめぐる紛争と紛争解決における広範囲なコミュニケーション・ネットワークが、渓谷共同体住民のアイデンティティと公共空間としての意識、さらには領邦改革運動につながる政治的な行為能力を高めたとの見解を公にした。これによりアルプス東部、中央部、西部の国家と社会の関係の特質を比較史的見地から明らかにすることができた。
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Research Products
(6 results)