2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370858
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 和行 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (10167108)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自由フランス / ドゴール / レジスタンス / チャーチル / ローズヴェルト / 国民戦線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題において、私はドゴールが率いた「自由フランス」の歴史を主権回復のレジスタンスとして位置づけ、主権の三要素(領土・国民・中央政府)を「自由フランス」がいかにして戦い取ってきたのかという視点で研究を進めてきた。申請段階では、領土・国民・中央政府を順に1年ずつ取り上げて解明していく計画であったが、申請書にも記したように、この三要素は現実には同時進行して獲得されていったがゆえに、本研究においても主権の三要素をめぐる戦いを同時並行的に解明すべく努めた。 初年度の平成26年度研究実施状況報告書には、400字詰め原稿用紙換算で361枚の草稿が出来上がっていると記したが、平成27年度の研究実績としては、400字詰め原稿用紙換算で525枚の草稿が出来上がっている。この1年で164枚を加筆したことになる。章ごとの内訳は以下のようである。( )内の数字は(前年度→今年度)を表している。はじめに(10枚→23枚)、第一章 自由フランスの誕生(50枚→60枚)、第二章 領土の獲得(136枚→170枚)、第三章 中央政府の樹立と国民の支持(130枚→152枚)、第四章 フランス解放の闘いと主権の回復(35枚→117枚)、おわりに(0枚→3枚)である。 加筆枚数が多いのは第四章であり、この1年で82枚を書き加えている。この第四章は臨時政府の成立と外交的承認の章であり、英米両国による臨時政府承認をめぐる争いについて、つまり英米首脳とドゴールとの角逐、チャーチル、ローズヴェルトによる反ドゴール工作などについて、とくに注力して研究を進めた。 併せて、国民の支持を調達するツールとしてのラジオの役割や「自由フランス」の諜報組織BCRAの実態、さらには、シリア、マダガスカル、サン=ピエール・エ・ミクロン島などでの主権をめぐる連合国との軋轢についても論究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現時点で、400字詰め原稿用紙換算で525枚の草稿が出来上がっている。完成度は80%と自己評価しており、以下の構想で順調に研究が進んでいる。 はじめに、第一章 自由フランスの誕生(1 敗戦とドゴール 2 ロンドンのフランス人 3 自由フランスの誕生)、第二章 領土の獲得(1 南太平洋・アフリカ 2 連合国との軋轢 3 北アフリカ上陸)、第三章 中央政府の樹立と国民の支持(1 植民地防衛評議会 2 全国抵抗評議会 3 フランス国民解放委員会)、第四章 フランス解放と主権の回復(1 コルシカ解放と諮問議会の成立 2 共和国臨時政府の樹立 3 パリ解放)、おわりに 今年度の課題は、昨年度の実績報告書に記した「残された課題」を仕上げるべく、その研究を推し進めることであった。「残された課題」とは、第二章の北アフリカ上陸後の「自由フランス」と民・軍司令部との抗争を解明すること、第三章の国内レジスタンスの統合過程の細部を詰めることであった。第二章の「残された課題」は今年度ほぼやり尽くしたが、第三章の課題にについては、ジャン・ムーランと他の国内レジスタンス指導者との関係で一部未解明な部分を残すことになった。それでも、昨年度より原稿用紙164枚分も草稿の分量が増え、完成にさらに近づいたゆえに、「(1)当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本研究課題の最終年に当たる。順調に研究が進んでいるので、来年度の完成を目指して、研究をいっそうブラッシュアップし、入念に当初の計画に従って今後も研究を続けることが肝要であろう。具体的には、主権の3要素を獲得するプロセスについて、とくに国民の支持を調達するプロセスとして、国内レジスタンスの最大勢力となった共産党とのヘゲモニー争いを今少し詳細にする必要があるだろうし、政党を嫌悪する国内レジスタンス指導者と政党を受忍するドゴールとの論争などにも目を配る必要がある。 また、領土獲得の最終段階として、フランス本土解放の戦いがあるが、それは、軍政を阻止するという臨時政府と連合国との戦いでもあったので、主権の回復というパースペクティヴで整理する必要があるだろう。主権回復の戦いの最後は中央政府の承認であるが、英米両国の承認の遅れとソ連の承認に前向きな対応とを比較考量しつつ、戦時下の国際政治なり外交交渉としてまとめ上げる必要があるだろう。 さらに、ドゴールの主権回復の戦いにとって障害となったいくつかの要因、つまり、「自由フランス」内の反ドゴール派勢力(ミュズリエ提督、ラバルト等)との抗争や、ジロー派(ジロー、モネ)との覇権争い、さらにはアメリカに亡命した著名フランス人とドゴールとの悪しき関係などを再整理することで、主権回復の戦いを多変数解析的にまとめ上げることができるだろう。本研究課題の最終年度は、こうした研究を推進しつつ、推敲に推敲を重ねて、出版のための完成稿を仕上げることにする。
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