2016 Fiscal Year Research-status Report
近世イングランドにおける帰化制度の近世的特徴と他者差異化の論理
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26370862
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
中川 順子 熊本大学, 文学部, 准教授 (00324731)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 帰化 / デニズン / ドイツ系移民 / 文化変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、以下の4点である。第1に、近世イングランドにおける移民について、帰化と彼らがもたらした文化変容に関する史料・文献類の調査と収集を、イギリスの大英図書館とユグノーに関する史料館等で行った。18世紀前半のユダヤ人のための一般制定法による帰化をめぐる当時の議論に関するパンフレット類も収集した。第2に、第1の成果をもとに、18世紀前半イングランドに到来した移民に関する研究の整理を行い、これまで十分に研究がなされなかった当該時期のロンドンにおけるドイツ系移民の実態を明らかにした。さらに、彼らがイギリス社会に与えた経済的影響力や彼らのネットワーク形成についても研究を進めた。第3に、移民がもたらす文化変容についての研究を進め、移民の技術移転がイギリス社会の食文化に与えた影響を、彼らと帰化との関連をふまえて明らかにした。第4に、18世紀イギリスにおける帰化取得者とデニズンの実態を一次史料をもとに分析し、その取得者に前世紀と比較してどのような特徴があるかを明らかにした。本研究と第2の研究成果に基づく取得者の特徴は、17世紀に取得者の中心がフランス、オランダ出身者であったのに比べ、18世紀はドイツをはじめとした中欧やロシア出身の商人が多くなったことである。18世紀の前半の一部の時期を除いて、帰化もデニゼイションもその付与が減少した。その背景として、帰化によるメリットを享受することができるのは一部の外国人であること、帰化の理念に血統主義が導入され、移民の「イギリス人化」に制限(排除)が見られるようになることが挙げられる。本研究から、現在のイギリスの移民政策や移民への嫌悪、移民の排除の歴史的転換点は18世紀にあったと指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
熊本地震の発生により年度当初に研究を進めることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題研究期間の最終年度にあたるため、研究をまとめる。
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Causes of Carryover |
公務多忙による海外調査の断念。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度できなかった史料、文献の調査収集を今年度イギリスで行う。
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