2015 Fiscal Year Research-status Report
第二次世界大戦後東中欧における複合的強制移住のメカニズムの解明
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26370863
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山本 明代 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (70363950)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第二次世界大戦 / 東中欧 / ハンガリー / チェコスロヴァキア / 住民交換 / 土地改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度には、ハンガリー国立文書館と国立図書館において資料調査を行った。国立文書館では、昨年度に続いてヘス・アンドラーシュ分館において首相文書を、マイクロフィルム館において外務省文書を閲覧・収集した。27年度にはチェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換に焦点をあて調査した結果、この住民交換に関する両政府間の会談と住民交換協定に関するハンガリー政府の見解、移住委員会の運営の詳細が明らかになった。国立図書館では、この住民交換と土地改革との関連性、交換された住民が移住後に直面した問題や地域社会への適応の困難さに関する論文を収集した。 資料調査によって得た成果を東欧史研究会12月例会において、「第二次世界大戦後チェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換の社会的影響」と題して報告した。報告では住民交換協定とその実施、移住者と地域社会について考察し、住民交換協定により措定されたマイノリティ住民とは、「集団的犯罪者」と見なされたハンガリー系マイノリティであり、そこではマイノリティ住民の選別が行われたこと、そして、住民交換は追放(強制労働による移住・逃亡)、同化政策(再スロヴァキア化)の一連の過程の一部であり、スロヴァキア南部領土の国民化を目的としていたことが明らかになった。また、住民交換の社会的影響に関しては、住民構成の変化に注目するとエスニック・コミュニティの衰退がみられ、異なる地理的条件によって、地元の農法への適応や生活再建、新たなネットワーク構築を迫られたことなどが解明された。そして、住民交換は実施した両国と国際社会が意図したようなマイノリティ問題を解決する手段とはならず、さらなる移動とエスニック集団の形成、近隣関係の再編を移住者と地域社会にもたらすことになった。 同タイトルの論文もすでに執筆し、28年度に刊行予定の論文集にて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チェコスロヴァキアとハンガリー間の住民交換に関して、ハンガリーでの調査については計画通りであるが、チェコおよびスロヴァキアでの調査ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度には、ハンガリーでの調査に加えて、ドイツ、チェコ、スロヴァキアでの調査を行って、遅れを取り戻し、研究成果を発表・公表していきたい。
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Causes of Carryover |
計画していたドイツ、チェコ、スロヴァキアへの調査のための海外出張ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度にはドイツ、チェコ、スロヴァキアへの調査を計画し、27年度までの遅れを取り戻したい。
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Research Products
(6 results)