2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Pilgrims' View on Islam, Muslims and the Crusades in the Second Half of the Sixteenth Century
Project/Area Number |
26370867
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 十字軍 / オスマン帝国 / 聖地巡礼 / オスマン帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、1591年から1600年に作成された旅行記全22作品の内、聖地巡礼記と判断された11作品についての分析を中心に行った。16世紀においては、時の経過とともに聖地巡礼者たちの中から「十字軍の希望」が徐々に消えていく傾向にあった。また、反イスラーム感情も、カトリック圏内の教会人に限定されていった。そして、13世紀までに展開された十字軍運動が、現状との対比の中で過去の栄光として歴史化されていった(いわゆる「盛期十字軍」の過去化・歴史化)。このような状況の中で、反イスラーム感情と結びついた形での「十字軍待望論」を抱いたのは、伝統的に「十字軍」と関わってきたフランス出身者や、レコンキスタの完了という中で、さらには宗教改革・対抗宗教改革運動の中で、新たなカトリックの盟主としての地位を確立することとなったスペイン出身者たち、しかもそれらの国の教会人に限定されることとなった。 しかし、16世紀末に至って、ついにそれも消滅してしまった。ただし、それは「十字軍(待望論)の消滅」を意味するわけではない。ごく一部の者であるが、ヨーロッパ世界内部の平和と「十字軍」の言説を結びつけた、「教会の十字軍」に対する待望を示す者が存在するからである。そしてこのことは、17世紀に新たな「十字軍」観が到来することの予兆として考えられるのではなかろうか。このような展望が得られたことも、本研究の大きな成果の一つであったと言える。
|