2014 Fiscal Year Research-status Report
英領ジャマイカの4砂糖農園における黒人奴隷人口の比較研究
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26370868
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
伊藤 栄晃 埼玉学園大学, 人間学部, 教授 (60213071)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 西インド諸島 / ジャマイカ島 / 砂糖プランテーション / 黒人奴隷 / 人口 / 家族 / 大西洋貿易 / イギリス帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は実施計画では(1)文献調査と最新の研究動向の確認、(2)資料調査を実施する予定だった。 (1)では、黒人奴隷の労働、家族生活・出生と死亡に関する文献10点、奴隷反乱に関する文献3点、砂糖農園主とその経営に関する文献4点、大西洋貿易に関する文献3点、その他10点を収集・調査できた。南北アメリカ近世史研究において、黒人奴隷の人口・家族研究がその中心的テーマのひとつとしてますます深められていることが分かった。それらの成果の中では、とくに農園労働や農園奴隷社会階層制における奴隷男女の関係の解明や、奴隷制廃止(1834年)以降のジャマイカ黒人社会の問題(家族形成上の支障・出生力停滞・人口停滞)が注目される。 (2)では、ロンドンのイギリス国立公文書館で資料調査を実施した。やはり実施計画に沿って黒人奴隷の人口・家族研究における基本史料と位置付けられている「奴隷登録簿」の調査と関連頁のゼロックスコピーの取得を実施した。計画では、英領ジャマイカで1817年から1832年までに6回実施された奴隷登録記録を、砂糖農園主ジョン・ソープ所有の6砂糖農園を軸に、それと比較するために4農園を調査することになっていた。このたびの調査では、必要箇所のコピー取得とそれらのファイリングとを完了することができた。そして名寄せによる史料連結分析の準備のため、記載されている奴隷一人ひとりについてカード化作業を進めている。この作業は1817年の第1回調査分について完了した。その結果、欧米の研究でも指摘されていないことではあるが、備考欄に少なからず母親の名が記されていることに気が付き、奴隷の母子関係を通して、彼らの出生行動について有力なデータが作成できることが期待される。その他、農園ごとに現地生まれのクレオールとアフリカ生まれの者との比率が大いに異なることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)の文献研究では、当該テーマで近年著書として公刊されたものはほぼ網羅できているが、学術雑誌に発表された論稿の調査は完了していない。また1980年代以前の研究文献の調査も不十分である。ただこれらの点はすでに計画に織り込み済みである。 (2)の史料調査作業では、黒人奴隷一人ひとりのカード化作業が、完了していない。これまでに1817年の第1回登録については、対象農園すべてについてその作業は完了しているが、第2回(1820年)以後については、これからの課題とせざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず前年度の作業で完了していなかったものの遂行を急ぐ。すなわち、(1)文献研究では、とくに最新の雑誌論文の調査と1980年代以前の成果の把握を急ぐ。また(2)の史料調査では、奴隷個々の情報のカード化作業を進め、名寄せによる資料連結を実施し、奴隷家族の復元作業に着手する。 この作業と平行してソープ家以外の4農園の所有者ファミリーの史料の所在とできればそのコピーの取得のため、英国の地方公文書館(取り分けオックスフォードとケンブリッジ)の調査を実施する。
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Research Products
(1 results)