2015 Fiscal Year Research-status Report
ロシア第一次革命における労働運動と自由主義運動-同盟・包摂・乖離の視点から
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26370872
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
土屋 好古 日本大学, 文理学部, 教授 (70202182)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア第一次革命 / 自由主義運動 / 労働運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
史料文献調査:フィンランド国立図書館(=ヘルシンキ大学図書館)スラヴ図書室において、1906年の第一国会関連を中心に同時代文献の調査と収集をおこなった。 研究発表:平成27年8月3日から8日にかけて開催された第9回国際中欧・東欧研究協議会幕張世界大会の一パネルにおいて英語報告を行い、海外からの参加者たちと議論を交わした。本報告は、日露戦争・第一次革命期における自由主義者の側からの包摂的なネイション形成への志向と行動を具体的に分析したものであり、本研究課題の研究成果の一部を構成するものである。 このほか、過去の科学研究費補助金の成果であるが、本研究課題と密接な関連をもつものとして、英文論文"From Workers' Milieu to the Public Arena: Workers' Sociability and Obshchestvennost' before 1906" (in Yasuhiro Matusi ed., Obshcestvennost' and Civic Agency in Late Imperial and Soviet Russia. Palgrave Macmillan)を発表した。松井康浩九州大学教授を研究代表者とする科学研究費補助金(課題番号23320160)による研究分担者としての成果であり、研究に参加したメンバーによる英語論文集として刊行されたものである。ここではロシア版の市民社会ともいえるオプシチェストヴェンノスチと労働者階級の関係を考察し、第一次革命期に労働者階級の行動が日常世界を越えて展開する一方、自由主義者の側の包摂的な志向があって、拡大オプシチェストヴェンノスチともいうべき状況が現出していたことを明らかにした。この結論は、本研究課題の一部にも引き継がれることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、史料・文献を収集することができた。また本研究課題である労働運動と自由主義者の関係を対照的に把握するために右翼関係の新しい研究も入手して分析することができた。第一次革命で危機感を抱いた人々の間から右翼運動が本格化・組織化したことは従来の研究からも明らかであったが、今回こうした右翼運動が大衆運動化する中で、労働者階級の取り込みにも熱心に取り組んでいたことが明らかになった。大衆政治状況が出現しつつある中で、自由主義者だけでなく右翼もまた労働者との関係を取り結ぼうとしていたことは、この時期のロシアの労働運動の多面的な特質を明らかにするうえで、重要な発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究代表者は、勤務先大学から1年間の研究休暇の機会を与えられた。このため、本研究課題の最終年度にあたる本年度は、かなりのエフォートを本研究課題に割くことができる。6月半ばから7月末には、これまでの2年間の史料・文献調査を補充するためロシアのペテルブルクの図書館・文書館、およびフィンランド国立図書館スラヴ図書室において再度史料・文献の調査収集を行う予定である。また来年2017年は、ロシア2月革命・10月革命の百周年にあたり、これを記念した論集が岩波書店から刊行される予定であり、そこに寄稿することが決まっている。この寄稿に、本研究の成果の一部を発表する(これは本年8月末を締切としている)。こうした史料・文献調査、論稿執筆などと並行して、本研究課題のまとめの作業に取り組む予定である。
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Research Products
(3 results)