2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370880
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Research Institution | Gakushuin Women's College |
Principal Investigator |
武井 彩佳 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 准教授 (40409579)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ユダヤ人 / ドイツ / 財産移転 / 戦後補償 / イスラエル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の最大の成果は、単著『<和解>のリアルポリティクス―ドイツ人とユダヤ人』(みすず書房)の出版である。本書はホロコースト後のドイツ人とユダヤ人がいかに和解に至ったかを、ドイツとイスラエルの外交関係、ドイツ国内のユダヤ人社会の再建、記憶と想起といった観点から分析したもので、本助成よりも射程の広いテーマを扱っている。直接的に本助成研究に関係するのは、戦後のユダヤ人財産の返還とその移転、そしてこれがイスラエル国家に与えた影響を論じた第一部である。 日本では困難な過去を克服するモデルとされることの多いドイツの戦後処理をリアルポリティクスという観点から評価しなおしたことにより、本書は歴史、国際政治等の分野で幅広い議論の糸口を提供した。これまでも複数の新聞や学術雑誌に書評が掲載されている。また日本記者クラブや筑波大学歴史人類学会等の場所で、本書に関連する講演を行った。これらの講演はともに会見詳録や講演記録として文字化されている。 ただし本書の執筆に多大な時間が取られたことにより、本来計画していた史料収集などが行えず、結果的に助成期間を延長することとなったのも事実である。助成が終了する前に成果の一部を発表した形となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本研究テーマより射程の広い単著を出版したため、その執筆に時間が取られ、予定していた史料収集のための海外渡航が実施できなかった。結果的に一年研究期間を延長することとなった。したがって計画していた英語の論文の執筆や国際学会での発表等が実現していない。
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Strategy for Future Research Activity |
本が出版され、ようやく本研究だけに集中できる状況になった。本年度は夏季休暇中に海外に渡航し、史料を読み込んだのち、仕上げとして英語の論文を執筆する。論文は海外の学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
本の執筆に時間と労力が取られ、本来計画していた海外での史料収集が実行できなかったことが、繰り越しが生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は夏季休業中(もしくは来年の3月)に海外での史料収集を行う予定である。行き先は、ドイツ/フランス/ポーランドを中心にヨーロッパ諸国か、ホロコースト記念博物館の資料が閲覧できるアメリカ、ワシントンもしくはユダヤ系の文書館の多いニューヨークとなるだろう。
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Research Products
(4 results)