2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370882
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
藤本 和貴夫 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 学長 (70029734)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
華 立 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20258081)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日ソ関係 / 後藤新平 / スターリン / 中東鉄道紛争 / 国際研究者交流 / ロシア:中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1929年の中東鉄道をめぐる中ソ武力紛争が、それまで比較的安定していた日ソ関係を不安定化するにいたるメカニズムを、東北アジアにおける日ソ・日中・中ソ関係に注意を払いつつ明らかにしようとするものである。 1.従来、いきずまった日ソ漁業交渉を解決したことで注目される1928-29年の後藤新平の訪ソの主目的は、日ソ間の「隔意なき協商のもと」に中国東北地方に対する政策を進めたいというものであった。後藤とスタ-リンの2度の会談で後藤が張作霖の評価を繰り返しスターリンに尋ねたことは、「中国問題」で日本の関心が中国東北地方の地方政権にあり、スターリンも同様の関心をもっていると考えていたことを示すものである。後藤訪ソの意義をとらえなおす必要がある。 2.ロシア革命後、中東鉄道が中ソ間のさまざまな紛争の原因になっていたことから、日本はソ連が中国に中東鉄道を返還あるいは売却することを恐れていた。もしそのようなことが起これば日本の所有する南満州鉄道に影響することが必至であったからである。そのため、外務事務次官吉田茂は1929年3月、帰国する駐日大使マイスキーに満州問題に関する日ソ協定を打診、後藤新平もソ連が所有する中東鉄道の株式の50%の日本への売却を私的に提案し、スターリンに伝えるよう求めた。 3.しかし、張学良をはじめとする中国東北当局による中東鉄道利権の強行回収は、1929年の秋には中ソの軍事衝突に至り、ソ連軍の圧勝に終わった。日本の介入を警戒するスターリンが日本が軍事行動を起こさないことを確信したうえでの軍事介入であったと考えられるが、確認はできていない。 4.この戦闘に関する関東軍の現地からの報告は、いずれも、ソ連軍のレベルの高さと中国東北軍の戦闘力のなさを指摘しており、関東軍の一部に中国東北軍は「日本軍の敵ではない」という意識を植えつけた可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当時の在ハルビン満鉄調査機関の報告書等の収集と分析は進んだ。またロシアの現地調査および招へいによるロシア研究者との共同研究は一定の進展を見た。他方、中国黒竜江省社会科学院からの専門家招へいによる研究会の開催は、両方の日程が合わず、次年度に延期することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
1929年7月の中ソ国交断絶から、ソ連が軍事介入に踏み切る同年11月までのソ連の対中・対日政策の動向を、中国とロシアの研究者を招へいした研究会を行う。また、その後の日中ロの関係についても現地調査を含めて行う。
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Causes of Carryover |
中国黒龍江省社会科学院から研究者を招へいし日本で研究会を開催する予定であったが、日程の都合で翌年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度には確実に中国黒龍江省社会科学院から研究者を招へいし研究会を開催する。
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