2014 Fiscal Year Research-status Report
東北地方における霊場の成立と展開-石造文化財からみた山寺立石寺-
Project/Area Number |
26370889
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
荒木 志伸 山形大学, 基盤教育院, 准教授 (10326754)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 石造文化財 / 近世考古学 / 立石寺 / 庶民信仰 / 霊場 / 墓標 / 出羽三山 / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
山寺立石寺の石造文化財の調査成果の公開・発信を目指し、重要な地域について詳細な立体映像などのデジタルデータの取得に着手した。研究協力者である山口欧史氏の支援のもと、磨崖供養碑の三次元計測を実施した。本年度は、弥陀洞地区の計測を中心におこなった。その結果、全体や1つ1つの磨崖供養碑の内容が詳細に確認できる立体映像を得ることができた。これらをインターネット上で公開できるよう、今後は処理を進めていきたい。なお、高所に彫り込まれ大きさの計測や、銘文の解読が難しい磨崖供養碑について、デジタルデータからの解析により詳細なデータを獲得できることが判明した。従来、調査困難であった磨崖供養碑のより高度な情報取得の上で非常に有効で、弥陀洞地区以外でも同様の計測作業を進めていきたいと考えている。なお、慈恩寺においても、石造文化財等の寺院所有の文化財の三次元計測をおこなった。 比較検討対象とした霊場に関して、出羽三山神社及び歴史博物館の協力のもと、羽黒山の御本坊平と霊祭殿脇地区の石塔の調査に着手した。その結果、山寺立石寺との相違点がより鮮明に説明できるデータを取得した。例えば、羽黒山御本坊平では、東日本全域の多様な石塔が多数存在する。住職クラスの巨大な墓石が林立し、その規模は同時代の山寺立石寺の石造文化財と一線を画している。一方で霊祭殿脇の墓標群は規模や銘文内容から在地の人々が建立したものが多く含まれている。広大な霊場という空間を、どのように外部に開放し、それぞれの地区をいかに展開していたかという情報は、羽黒山と同様に大規模な空間を占める霊場立石寺の解釈に置いても非常に興味深い資料となる。松島瑞巌寺や山形県置賜地区をはじめ、山寺立石寺と比較検討対象となる霊場を調査を今後も推し進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果公開に向けて、立石寺参道での三次元計測作業に入り、順調に画像を取得することができた。さらには、詳細な画像を処理することで、高所や危険な地区にある磨崖供養碑について、目視のみ調査では不可能であった計測や文字の解析が可能であることを確認した。しかし、その有効性から、一度終了していた磨崖供養碑についても、再度計測を行い、より詳細なデータを取得できる可能性が広がったことにより、それに要する時間が新たに必要となった。なお、関連霊場の調査についても出羽三山にはじめて本格的に調査に入り、山寺立石寺を解釈する上で有益なデータを獲得することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
三次元計測により得られる磨崖供養碑のデータは、近世初期段階における霊場としての山寺立石寺を解明する上で非常に重要なものである。したがって、一度終了していた磨崖供養碑についても、再度計測による調査および解析をおこないたい。その際には、本年度の現地での計測経験をもとに、詳細かつ有益なデータを取得できる方法を検討したうえで、現地に入りたい。また、羽黒山をはじめとする関連霊場の調査についても、石造文化財の調査スキルを有した学生を動員することで迅速かつ正確に解読作業を進め、御本坊平と霊祭殿脇の地区の2015年度内に終了させたい。
|
Research Products
(7 results)