2015 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代豪族居館と王宮の企画論を中心とする比較研究
Project/Area Number |
26370893
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
橋本 博文 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (20198691)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 三ツ寺Ⅰ遺跡 / 北谷遺跡 / 脇本遺跡 / 月城遺跡 / 張り出し部 / 下城 正 / 若狭 徹 / レーダ探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は群馬県三ツ寺Ⅰ遺跡のレーダ探査、ボーリング調査、現地観察などを行った。その結果、現行の下城正氏や若狭徹氏らの復元案の問題点を指摘することができた。すなわち、北東辺と南東辺の張り出し部の有無の問題や南西部の出入り口施設の大型張り出し部を介在する復元案について新たな見解を得ることができた。また、若狭氏の北西辺南側張り出し部の想定復元に関して、ボーリングで検証し得た。さらに、内部のレーダ探査によって居館南区で掘立柱建物1棟、北区で竪穴住居址2棟を確認することができた。加えて、役所で小縮尺の地形図を入手し、発掘報告書の図面との対比を行った。 三ツ寺Ⅰ遺跡の調査に続いて、同一地域圏内に在る北谷遺跡の南辺の張り出し部の有無をボーリングで探った。その結果、南辺にも張り出し部の存在する可能性が高まった。その後、前橋に在る群馬県立文書館所蔵の明治時代の公図(600分の1)のマイクロフィルムでの閲覧・複写を果たした。 畿内の王宮に関しては、脇本遺跡の現地を訪ね、地形を観察した。三ツ寺Ⅰ遺跡と併せて、土地所有者に関する情報を法務局で入手し、次の調査の段階に備えた。 一方、海外の朝鮮半島韓国の三国時代の居館・王宮関連遺跡の情報を入手するため、訪韓し、金海周辺の遺跡や慶州の新羅の王都にある王宮、月城遺跡の調査成果を収集することができた。また、参考文献も入手して来た。 年度末には、纏向学研究所主催のフォーラム『宮室・楼観・城柵厳かに設ける―卑弥呼の居処―』に参加し、多くの情報を仕入れることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の遅れを群馬県三ツ寺Ⅰ遺跡のレーダ探査、同遺跡と北谷遺跡のボーリング探査の成功で取り戻した感がある。また、海外の韓国での調査で次のステップに続く資料の収集が果たされた。また、人的な繋がりを得ることができた点も大きな成果である。年度内には、論文にまとめたり、学会発表はできなかったりしたが、新年度の日本考古学協会での発表にノミネートすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
三ツ寺Ⅰ遺跡や北谷遺跡とほぼ同時期の古墳時代中期の大型居館、栃木県権現山遺跡において昨年の発掘調査で新たな居館を確認することができた。その規模と形態を明らかにし、前二者と比較するため、その南西部の表土はぎを行い、遺構確認を実施する。一方、北谷遺跡は、昨年度のボーリング調査で南辺にも張り出し部が2つ付くことが想定されたが、その部分のレーダ探査で確証を得たい。また、内部の大型竪穴住居址の存在もトレンチ発掘で2辺が検出されているのみだが、三ツ寺Ⅰ遺跡での成功により、直交方向の2辺の確認がレーダ探査でできるものと信じている。さらには大型竪穴住居址以外の遺構の存在も明らかになる可能性が高い。そうなれば、三ツ寺Ⅰ遺跡との内部の比較も可能となろう。 福島県古屋敷遺跡に関しては、2号居館内部の発掘調査が昨夏に引き続き今夏も、地元喜多方市教育委員会で計画されている。調査指導委員会の委員として効率的な遺構確認の面的調査を昨年同様提言していきたい。 対して、王宮の方だが、東日本の上記各遺跡とほぼ同時期とされる奈良県桜井市脇本遺跡の石垣状遺構の東・西辺、北辺の広がりを三ツ寺Ⅰ遺跡同様レーダ探査できないか、検討したい。纏向遺跡に関しては、調査担当者である橋本輝彦氏らとの意見交換をさらに進め、年度末にシンポジウムを計画したい。 外的影響については、朝鮮半島の関連遺跡を再度訪ね、資料収集の段階から次につながる考察の段階に進めたい。 そして、3年間にわたって蓄積した資料を基に考察を深め、学会発表を基に昨年実現できなかった論文発表や報告書の作成を実現したい。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、最終年度に奈良県脇本遺跡等王宮所在地の遠隔地の遺跡調査費用がかさむと予想されたからである。そのため、単年の予算の一部を繰り越し、最終年の予算規模を大きくして対応しようとしたものである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、北谷遺跡や権現山遺跡のほか奈良県脇本遺跡を中心に、新潟大学災害復興科学研究所でもつ機器を利用して卜部厚志氏の協力を得ながらレーダ探査をするか、業者に発注してレーダ探査をしたい。関連測量は、新潟大学考古学研究室の学生らをアルバイトというかたちで動員したい。それ故、旅費や委託謝金が必要となる。さらに、朝鮮半島の同時代の王宮や豪族居館との比較という視点で、現地の遺跡の視察や報告書・論文の収集を実施すべく、訪韓する旅費を計上する。加えて、シンポジウム開催経費と最終報告書の作成経費の執行を予定している。
|