2017 Fiscal Year Annual Research Report
Archaeological study on ironware pdoduction and distribution in the Yayoi period.
Project/Area Number |
26370895
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野島 永 広島大学, 文学研究科, 教授 (80379908)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 考古学 / 弥生時代 / 鍛冶遺構 / 複合生産 / 鉄器文化 / 交易 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、検出例が増加した弥生時代の鉄器加工に関わる生産遺構を中心として、手工業生産の複合化あるいは集約化を示す遺構の類例を示していった。鉄器加工遺構(鍛冶遺構)からは他の手工業生産に関わる原材料や素材が見つかることがある。碧玉や緑色凝灰岩、水晶など玉作りに供された夥しい原料素材・未成品・石屑が見つかる場合には、管玉などの施溝分割や穿孔に使われる鉄製工具の製作が行われていたと推測される場合もある。特定の遺構やその周辺において複数の手工業生産が実施されていたと想定される場合、それを手工業生産の複合化や集約化を示す考古学的根拠として把握できるものとし、このような生産遺跡を類型化し、その動態を明らかにする。 弥生時代中期後半には九州北部以東の地域においても稚拙な鍛冶加工を行う技術が波及したが、これを契機としてさらなる手工業原料の開発と加工生産が触発され、対外的な交易が活発化していった。複合化した生産遺構の多くが弥生時代後期後半から終末期に出現することを示し、手工業の素材原料が付近に賦存する地理的環境をもつ交易拠点集落において、顕著な複合的生産遺構が出現してくることを明らかにした。 そして、複数の手工業生産が実施されていた場合、加工に関わる資源の入手や加工品の掌握はより大きな経済的利益や精神的恩恵をもたらす戦略的経済活動として専ら地域首長の関与する事態へとなっていったものとし、鉄器化を通して地元手工業生産の再編を助長しつつ、遠隔地との交易を行い、経済的基盤を整備してさらなる対外的な交渉の経験を積み重ねていったことが、階層間格差の拡大とともに貴重品・高級品の集約・掌握と再分配を機軸とした経済活動の興隆に繋がる大きな社会変革を生み出していったものとみることができた。今後とも、アジアにおける「鉄器化」の比較考古学的研究に寄与する文化進化の枠組みを作り出していきたい。
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Research Products
(3 results)