2015 Fiscal Year Research-status Report
高精度地球科学分析を用いた弥生時代の石器生産と流通ネットワークの解明
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26370898
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田尻 義了 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (50457420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 達朗 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 助教 (00582652)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 岩石学 / 地質学 / 微量元素 / 希土類元素 / 弥生時代 / 玄武岩 / 石斧 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度も今山系石斧に関する総合調査を継続して推進している。研究の具体的な目的は、今山系石斧と称される玄武岩製の弥生時代の石斧が、今山産出(福岡市西区所在)の玄武岩だけでなく、未知の玄武岩を使用して製作されていることが判明したため、新たな産地を探索することである。弥生時代の流通量に対して、今山産と非今山産の割合がどの程度になるのかを調査し、今山ブランド石斧の流通範囲とその他の石材の流通範囲の重なり合いを具体的に明らかにし、弥生時代の資源獲得状況やヒトの動きを探ることを目的としている。なお、石材の分析には地球科学の分野で用いられる高精度な分析手法を駆使し、全岩化学組成、微量元素、希土類元素の組成比較、鉱物化学組成、鉱物の組み合わせを実施している。 本年度は、伊万里地域の玄武岩の露頭調査を実施し、新たな産地の石材サンプルを採取した。採取したサンプルに対して分析を実施したが、新たな産地の発見には至っていない。 また、考古資料としては中山資料の10点に対して、サンプルコアの採取を実施した。考古資料に対するサンプルコアの採取を行うために、昨年度配備したマルトー社製の卓上コアピッカーを改造し、対象資料の様々な形態に対する汎用性を高めた。その結果、多くの石斧資料に対してサンプル採取が可能な機器として改造することができた。 なお、平成27年度から研究の対象範囲を玄武岩製の石斧資料だけでなく、弥生時代の滑石資料に対してもサンプル採取や分析を進めており、研究課題が順調に広がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
石斧の形態情報を残しながら、破損面からサンプルを採取する方法は、昨年度まで資料の形状に制約があったが、本年度実施した機器の改造により、資料の形態上の制約は解除され、多くの考古資料に対してサンプルを採取することが可能となった。 また、新たな原産地探しは今年度も発見に至っていないが、候補地を1つ1つつぶしている状態であり、着実に絞り込みが行われている。 これまで進めてきた玄武岩製の石斧資料以外に、滑石資料に対しても分析を広げはじめ、着実に研究が広がりをみせ、当初の計画以上に本研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの高精度分析を実施した結果、平成27年度までにサンプルを採取した唐津地域や伊万里地域では、原産地を特定するに至らなかった。そこで、本年度は、両地域以外での原産地探しを実施する予定である。 また、平成27年度にサンプルコア採取に際し、資料の形態的制約を払拭するために改造した卓上コアピッカーを駆使し、より多くのサンプルコア採取を実施する予定である。 玄武岩製石斧資料以外の滑石資料に関しても、高精度な分析を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)