2014 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける石材利用技術の地域性と伝播・展開に関する基礎的研究
Project/Area Number |
26370910
|
Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
佐藤 亜聖 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40321947)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 一太 筑波大学, 芸術系, 助教 (40386719)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 採石 / 技術交流 / 中世 / 石造物 / 東アジア / 矢穴 / 国際情報交換 / 採石加工技術研究会 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本中世社会の大きな変革期である平安時代末~鎌倉時代初期について、石材利用技術の革新と東アジア社会の変化に着目して研究を行う。当該期は日本における技術革新期に相当し、石造物文化の開花期に相当する。日本における採石加工技術を俯瞰的に検討し、その地理的分布、時間的展開を把握することで、日本採石加工技術の技術系譜を明らかにする。さらに、中国を中心としたアジア世界における石材利用技術の相互関係を明らかにし、日本に導入された技術の系譜を解明することで、東アジアにおける対外交流史研究に技術交流史という新しいジャンルを開くことを目的とする。今年度は国内1か所と、国外調査2か所の調査を行い、研究会を開催した。 ・国内調査:大分県田染荘近代採石場の現地調査、同県臼杵城下町採石場の現地調査を行い、近世~近現代の軟質石材採石場の採石技術について検討を行った。 ・国外調査:今年度は韓国と中国を対象として調査を行った。韓国は慶州を中心に7世紀の磨崖仏、石塔に見られる矢穴痕跡について検討を行い、慶州周辺における矢穴が日本とも中国とも異なる三角形の形状を有することを確認した。 中国は華東理工大学および地元文物管理局の協力を得て、寧波周辺の採石技術の故地と考えられる河南省北宋皇帝陵採石場周辺の踏査を行った。12世紀~13世紀と考えられる当地の採石技術が、予想に反して北方地域に類似する大型矢穴技法を有していることを確認し、来年度以降の調査の計画を再検討する必要が生じた。 ・研究会の開催:科研費をもとに「採石加工技術研究会」を立ち上げ、2015年2月7・8日の両日、埼玉県小川町において、第1回研究会を開催し、下里・青山板碑製作遺跡の現地調査を行うとともに、6名の報告者を得て研究会を開催した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中国調査において研究当初予想していなかった採石技術が確認され、中国における技術の多様性が確認できたことは大きな成果であった。さらに、韓国における矢穴がこれらとは大きく異なる形状であったことから、東アジア全体で複雑な技術展開が予想され、今後の研究にさらなる展開を予想させる結果を得られた。 国内研究ではこれまで組織的な研究がなされてこなかった採石加工について、「採石加工技術研究会」を立ち上げたことで情報収集と意見交換の場を設けることができたのは、本研究の成果にとどまらず広く学会全体に寄与する成果である。 当初予定していた東南アジアの調査が達成できなかったが、韓国の調査を行ったことで今年度の調査目的を達成できている。 予定以上の調査を行うことができ、また研究会が当初想定を上回る規模と内容になったことで、当初計画以上に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
全体計画:国外調査の成果と国内調査の成果がまだうまく検討できていない。整合性の有無を考えるうえで、データの整理方法を見直す必要がある。三次元イメージ図の作成を含めたデジタルデータの活用が有効であり、実験を予定している。 国内研究:硬質石材加工技術と軟質石材加工技術の関連性について検討を深める必要がある。日本古来の技術と新来の技術の交差状況を整理する必要があり、これについては27年度の採石加工技術研究会でテーマとして取り上げ、検討を行う。 国外調査:中国寧波を起点とした技術の南方への展開について検討する必要がある。特に南に隣接する温州の石造物について調査の必要であり、当初予定にない調査を行いたい。中国南方系技術の展開について、当初初年度に予定していた東南アジア方面の調査が、中国を優先したため遂行できていない。これについては次年度以降行う予定である。
|
Causes of Carryover |
物品費については当初色彩計の購入を計画していたが、調査の進展に伴い色彩計測の有効性に疑問が生じたため、今年度の購入を取りやめた。次年度以降有効性の検証を継続し購入を計画したい。ただし購入がなくなった場合は今年度有効性を確認した簡易三次元イメージ作成ソフトの購入を行う。色彩計の購入を取りやめたことに伴い、次年度への繰越金が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
色彩計の有効性を検証し、有効ならば色彩計の購入を行う。有効性が疑問視された場合は簡易三次元井明治作成ソフトの購入を行う。
|