2015 Fiscal Year Research-status Report
国家形成期の畿内におけるウマの飼育と利用に関する基礎的研究
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26370911
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
青柳 泰介 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 総括研究員 (60270774)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウマ / 国家形成期 / 畿内 / 幼齢馬 / ストロンチウム同位体分析 / 炭素同位体分析 / 保存処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度に実施した近畿地方でのウマの歯・骨が出土する遺跡のデータ集成、南郷大東遺跡出土品の予備調査を踏まえて、平成27年度は各種分析調査、研究会等をおこなった。分析については、南郷大東遺跡出土品に対して、丸山(連携研究者)・覚張(研究協力者)両氏を中心に、炭素安定同位体分析、ストロンチウム同位体分析、年代測定を行った。同位体分析の成果については、研究者向けに『青陵』第146号で、一般向けに奈良県立橿原考古学研究所附属博物館のエントランスでポスター発表(報道発表も)を行い約400名の参加を得た(H28.3.26~4.17)。研究会については、平成27年10月31日に大阪歴史博物館で第1回古代の馬研究会を開催した(参加者12名)。平成26年度におこなった群馬県、山梨県での資料調査と、平成27年度に実施した各種分析を踏まえて、ウマの食性と移動(特に、東日本とのかかわり)について5名に発表していただき、参加者全員で討議した。 上記研究と併行して、奈良県立橿原考古学研究所所蔵の動物遺存体のうち、南郷大東遺跡出土のウマの比較試料となる遺物のなかで、劣化がすすんでいた十六面・薬王寺遺跡(田原本町)、谷遺跡(宇陀市)出土品の保存処理を、奥山(連携研究者)・柳田(研究協力者)両氏が行い、その過程および成果について、先述のポスター発表内で行った。 平成27年度の研究成果は、南郷大東遺跡出土馬歯の形態分析から幼齢馬が存在し、炭素同位体分析からその食性が成長過程で米麦から雑穀へ変化し、ストロンチウム同位体分析から東日本から連れて来られたウマがいた可能性を指摘できたことである。そしてその意義は、奈良県内で古墳時代にウマが飼育された可能性を、動物遺存体の分析を通じてはじめて提示できたことである。最終年度は、その可能性を補強していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の骨格をなす①馬歯・馬骨の集成、②脆弱遺物の保存修復、③ウマ遺存体の年齢推定・安定同位体分析・年代測定、④遺跡・遺構の研究も概ね進展し、中間成果報告(第1回古代の馬研究会、『青陵』第146号、ポスター発表、報道発表など)も行えたので、最終年度は最終成果報告へ向けての詰めの作業を残すのみであるから。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、南郷大東遺跡以外の馬歯・馬骨出土遺跡(H27年度に保存処理をした田原本町十六面・薬王寺遺跡や宇陀市谷遺跡など)についても同様の分析をして、奈良県でも古墳時代にウマを飼育していた可能性を補強し、連携研究者や研究協力者と研究会(第2回古代の馬研究会、シンポジウムなど)を重ねて、すでにウマの飼育が確実視されている大阪府や近畿地方の他地域の事例との比較研究を促進して、成果報告へとつなげていきたい。
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Causes of Carryover |
「その他」の費目の年代測定の委託費について、上半期に委託すると分析費用が安くなると判明したため、一部次年度に送ったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった分の年代測定を行う。
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