2015 Fiscal Year Research-status Report
放射性物質影響下における飼料資源の再生プロセスに関する研究
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26370918
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 栃木県 / 永年生牧草 / 除染 / 放射性物質検査 / 那須町 / 那須塩原市 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、①栃木県における牧草および土壌の放射性物質検査の結果分析、②栃木県那須塩原市および那須町の酪農・肉用牛経営に対する原発事故前後の飼料調達に関する聞き取り調査、③飼料栽培の一定期間禁止という共通項をもつ宮崎県の口蹄疫埋却地について、再生整備事業に関する現地調査を実施し、以下のような結果を得た。 ①2011年および2012年の一番草・再生草に対する放射性物質モニタリング検査によると、日光市、那須塩原市、那須町でセシウム濃度の暫定許容値を上回るサンプルが相対的に多かった。また2011年11月~12月に採取した農地土壌サンプルのセシウム濃度でも、そこで牧草を栽培した場合に暫定許容値を超える可能性のある土壌サンプルが、那須町では7割にのぼった。 ②調査対象農家においては、代替の外国産牧草の給与および自給牧草の制限給与により、一部経営で疾病牛・廃用牛の増加がみられた。また、2011年産牧草の圃場への還元や、反転耕で生じた石礫の処分などの作業に多大な労力を投じざるを得なかった。永年生牧草地の除染が必須であった那須町の農家では、牧草の播種適期までの作業完了、除染の前処理に対する労賃補償、ロータリー耕の実施余地などの理由から、一部またはすべての牧草地について東電の損害賠償請求による除染が選択された。那須塩原市の農家でも、空間線量率が高くなる防風林脇の圃場の一部を未作付地とする自主的な措置がとられた。 ③牧草地除染と口蹄疫埋却地の再生整備事業との違いは、前者が除染後の牧草栽培再開を約束されているのに対し、後者は宮崎県農業振興公社の農地保有合理化事業による所有権移動が行われた農地について、元の所有者が原則として買い戻すこともできなくなっている点と、一部の農地では整備後の土壌条件が作物栽培に適さなくなり、バイオマス発電の燃料用の牧草試験栽培圃場という新たな用途が生じている点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
宮崎県における口蹄疫埋却地再生整備事業、および栃木県における酪農・肉用牛経営に対する聞き取り調査に時間を要し、隣接する福島県の牧草給与自粛を受けた自治体において、除染および飼料資源の再利用に関する課題をヒアリングすることができなかった。また、放射性物質検査のデータを用いて、栃木県における牧草地の放射能汚染の地域的実態と、放射性セシウム濃度の減衰傾向を可視化する研究計画について関係機関と協議中であるため、28年度に当該空間分析を実施することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は、27年度にヒアリングを実施した経営体による牧草・飼料用トウモロコシの作付状況を踏査によって確認する。また、福島県における牧草地除染と放射性物質検査の実態に関するヒアリングを実施する。さらに、平成25年~27年の3カ年の栃木県の放射性物質検査データから、牧草地における放射性セシウム濃度の減衰に関する空間分析を行い、その結果を除染実施後の長期モニタリング方法の検討材料としたい。
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Causes of Carryover |
農家調査において、農家耕作地の位置情報をタブレット型端末に直接記録する方法をとり、記録用の空中写真および文具類を購入しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
空間分析を行うためのArcGIS用のデータの購入、栃木県および福島県における現地調査、報告書の作成に使用する。
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Research Products
(2 results)