2015 Fiscal Year Research-status Report
衛星データを利用した中央アジア・西アジアにおける歴史的集落の立地と形態の研究
Project/Area Number |
26370921
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小方 登 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30160740)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 衛星画像 / DEM(数値標高モデル) / 考古地理学 / 歴史地理学 / ウズベキスタン / 中央アジア / 西アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,2015年7月7日に,英国・ロンドンで開催された International Conference of Historical Geographers 2015 において,Study of the location and plan of Hellenistic and Roman cities in the Near East という表題でポスター発表を行った。そこでは,セレウキア・ピエリアやアパメアといった西アジアのヘレニズム・ローマ時代の植民都市について,衛星画像やDEM(数値標高モデル)を用い,立地とプランを検討した。 次に,9月20日~28日の間,ウズベキスタンにおいてフィールドワークを行った。あらかじめ衛星画像上で都市以降の存在を予測し,現地で確認するという方法をとった。調査はゼラフシャン川地域(サマルカンド周辺)とカシュカダリヤ地域(カルシおよびシャフリサブズ周辺)で行い,ウズベキスタン考古研究所の Raimkulov Abdusabir 氏に同行していただいた。エル・クルガンという都市遺跡は衛星画像上では五角形の城壁であるが,現地で確認したところでも遺存状態は良好であり,紀元前7世紀にさかのぼるという重要な遺跡であった。さらに衛星画像を検討すると,城壁の外側にも濠や外側の城壁などの痕跡が見られた。 オディルマ・シャフルという都市遺跡は,2013年の調査でも訪れたが,今回重ねて調査を行った。衛星画像上では三重の長方形の囲郭が確認できるが,現地の地表に散在する陶片からは,ヘレニズム時代にさかのぼる重要な遺跡であるという。現地の農民がここの地下に水道管があると教えてくれたが,実際,穴の側面に土管が埋まっていることを確認した。この遺跡はウズベキスタンの考古学者にも知られておらず,衛星画像による遺跡探査の成果であるといえる。 さらに2016年3月13日に東京で行われたフェニキア・カルタゴ研究会で,衛星画像と地形データでみるフェニキア・カルタゴの都市の立地という表題で発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ロンドンでの国際歴史地理学会で行ったポスター発表は,衛星画像やDEMの分析結果をグラフィカルに掲示したが,参加者の反応は今ひとつであったかと思う。 ウズベキスタンでの調査では,衛星画像上で特定した都市遺跡を現地で確認した。エル・クルガンは巨大で重要な遺跡であるにもかかわらず,日本ではほとんど知られておらず,これを実見したことは意義が大きい。オディルマ・シャフルは,ヘレニズム時代までさかのぼる重要な遺跡であることが分かり,地下の水道管の存在も実見した。現地の考古学者にも知られていないことから,事実上の新発見ということができ,予想以上の大きな成果であるといえる。 フェニキア・カルタゴ研究会の発表では,参加者の多くが歴史学に属し,衛星画像やDEMを利用した地理学的アプローチの意義をアピールすることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
西アジアは政情不安が続いており,フィールドワークを行うことには困難が予想されるので,慎重に検討する。今後は衛星データの分析を中心に研究を進め,研究成果を取りまとめる。衛星画像についてはすでに十分に保有しているので,DEM(数値標高モデル)を重点的に入手・分析する。リモート・センシング技術センターから提供されるAW3Dは,解像度と品質が非常に優れたDEMであるので,これを重点的に購入し,研究の素材とする。
|
Causes of Carryover |
衛星観測に基づくDEM(数値標高モデル)として,リモート・センシング技術センターからAW3Dが提供されるようになった。従来のものと比較して解像度が飛躍的に向上しているが,価格も高いため,その精度・有効性を慎重に吟味するため,時間がかかったのである。有効であると確認したので,今後はこれの入手と研究への活用に努める。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように,衛星画像に加えて地形データAW3Dを購入し,研究に活用する。
|
Research Products
(3 results)