2015 Fiscal Year Research-status Report
TPP・コメ輸入圧力下における日本の稲作と農山村の再編方向に関する地理学的研究
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26370932
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川久保 篤志 東洋大学, 法学部, 教授 (50314612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 達 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (40614186)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | TPP / コメ輸入 / 稲作 / 北海道 / 中山間地域 / 法人経営 / 集落営農 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、TPP大筋合意にともなって米輸入圧力が増している中、日本と輸出国産地の生産動向を踏まえて、日本の稲作地域が取るべき方策について検討するものである。 本年度の主な研究課題は、対日コメ輸出産地・カリフォルニア州におけるコメ生産の現状分析と、輸入米の増加に対する国内の米産地の対応について検討することであった。主な実績として、メンバー3人による大規模稲作地域・北海道での巡検に加えて、各人が前年度の文献・統計分析を踏まえて精力的に現地調査(代表者:カリフォルニア州,分担者:北海道,協力者:中国山地)を行った。 具体的に明らかになったのは、1)カリフォルニア州で栽培されているコメは中粒種が圧倒的で日本市場が好む短粒種の栽培は稀であること、2)米国では寿司をキーコンテンツとした日本食ブームにあり、生産過剰による輸出圧力は働いていないこと、3)過去2年間は旱魃により水田の作付面積が大幅に減少しており、コメ生産の拡大余地はほとんどないこと、4)北海道空知地方の農業生産法人では米価下落基調の中で農地集積と収量増大による対応が図られていること、5)北海道空知地方の農産物直売所では米の産直が行われているものの地場市場の相対的小ささから需要拡大が課題となっていること、6)中国山地(岡山県津山市)には2つのタイプ(農家および地権者からなる組織、オペレーター中心で結成された組織)の集落営農組織があること、6)それらの組織の現状として、定年後60代の「むら仕事」的な意味合いが強いことがあり、今後の継承をどう進めていくか、という共通の課題があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な研究課題は、3人のメンバーがそれぞれの研究課題に即して現地調査を開始し、その成果の一端を学会・雑誌で公表すること、ならびに次年度の本調査に向けた準備を行うことであった。 この点で、3人とも研究成果を学会発表ならびに論文執筆(掲載予定)の形で提示できたし、それぞれのフィールドであるカリフォルニア州・北海道空知地方・中国産地(岡山県北部)にて予備調査を実施し、文献・統計による事前の予想と現実との違いを認識することができた。 次年度も、各人の調査と夏期の共同調査もしくは研究会の実施を通じて、本研究課題のまとめ・総括を行っていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に行った予備調査を踏まえてメンバー3人がそれぞれ、カリフォルニア州、北海道・東北地方、中国山地にて本調査を行う。 カリフォルニア調査では、今年度に引き続き対日輸出実績のある精米・輸出業者、コメ卸売業者・州政府関係機関等でのヒアリングを行うが、特にサクラメントバレー内のコメ生産の地域差を解明すべく、バレー北部2郡でのフィールドワークを重視する。 北海道調査では、引き続き農業生産法人のヒアリングを行うとともに、農地集積の実態、経営の安定性、米の販路の動向を解明することで米産地の存続基盤を解明する。また、東北地方の優良米産地も事例に加え,都府県における農業生産法人の経営実態についても調査を行うことで産地間の地域性を比較する予定である。 中国山地調査では、昨年に引き続き津山市の集落営農の調査を行うとともに、久米南町北庄地区における急傾斜地の集落営農調査を進める。後者では、代表理事への聞き取りのほか、共同作業の参与観察や構成員への個別調査も行う。そして、これらの結果をもとに、集落営農が抱える問題点や支援の方策、米価低迷への影響などを明らかにする。 なお、これらの調査による成果は、秋期の地理学会にて3人共同で口頭発表すると同時に、学会誌等への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の予算執行においては、研究代表者が夏期・冬期の2度に分けて海外で現地調査をする計画を立てていたが、冬期の調査は稲作の農閑期であり、得られる成果が少ないことが判明したため中止した。これが、本年度予算を次年度に繰り越すことになった主な理由であるが、もう一つの理由として、研究分担者から国内調査において、次年度は北海道に加えて東北地方にも調査範囲を広げたいとの申し出があり、これに回す予算を計上する必要が生じたことも挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度予算の繰越額については、代表者が夏期に行う海外での現地調査の期間を長く設定すること、および研究分担者の国内での調査地を北海道に加えて東北地方にも広げることに伴う経費として、主に使用する。また、日程調整がつけば、分担者・協力者と共同で海外調査を実施する予定であり、その際の旅費に用いる予定である。
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