2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370937
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
加藤 政洋 立命館大学, 文学部, 准教授 (30330484)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 戦後沖縄 / 都市形成 / 離島出身者 / 就業構造 / 労働 / 人口移動 / 事業所 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間的な周辺性と社会的な周縁性(被差別性)を有した離島出身者について、沖縄島内における就業構造を中心とした社会地理を明らかにすることが、本研究の目的である。平成27年度は研究期間3年間の中間年にあたるため、前年度の基礎調査を踏まえて、ある程度までフィールドを絞り込んで、実地調査ならびに研究を進めた次第である。具体的には、1)那覇における旅館業の集積、2)基地都市コザにおける商業地区の形成、そして3)南大東島における商業地区の形成、である。 まず、1)に関しては、沖縄県公文書館の所蔵する『旅館営業台帳』(社会局公衆衛生課、1958年12月~1961年12月)の分析ならびに現地調査を実施した。その結果、沖縄島の北部(国頭)と南部(島尻)、そして宮古列島からの移入が顕著であることが判明した――したがって、今後は、離島のみならず、沖縄島内の周辺部も含めて分析する必要がある。なかでも目を引くのは、宮古列島の出身者で、その立地選択にも特色があった。 次いで2)に関してであるが、基地都市に固有の商業地(歓楽街)の形成について、やはり県公文書館所蔵の『事業所基本調査事業所調査票』(1970)を基礎資料として分析を進めた。具体的には、白人兵を主たる顧客とする「センター通り」と「ゲート通り」、そして黒人兵の集まる「照屋」地区の商業環境を復原している。その上で、字誌や各種の記念誌、新聞記事、さらには聞き取り調査で経営者の出身地を特定し、複合的な調査を進めてた次第である。 最後に3)に関しては、当初の研究計画では想定していなかった(ほぼ唯一の事例と言ってよい)大規模な離島間人口移動を引き起こした南大東島に関して、中心部(在所)の事業所経営者の出身地を中心に、聞き取り調査を実施した。その結果、伊是名・伊平屋、さらには久米島からの移動が認められ、サトウキビのモノカルチャー経済に起因する商業空間の形成されたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、2年目の調査・研究は、おおむね順調に進展している。とりわけ、1年目の基礎的な調査・研究から対象を絞り込んだ結果、ある程度、成果の公表に目途が立ったという点が、「おおむね順調」と自己評価する理由である。 まず、上記1)に関しては、第58回歴史地理学会大会(於:山形県立米沢女子短期大学)で発表した。また、2・3)に関しても、すでに基礎的な調査を終え、地図化を進めているところである。もう少し別の事例もほしいところではあるが、最終年度の総括に向けて、骨格となる事例は出そろったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、本課題研究期間の最終年度である。ここまでの2年間で蓄積した資料・情報・知見をあらためて整理しつつ、研究成果のまとめに向けた調査・研究を引き続き実施する予定である。 まず、上記1)に関しては、必要な追調査をした上で論文にまとめ、学内の紀要などに投稿することとしたい。とくに経営者への聞き取りが実施できていない状況ゆえ、どうにかこの点をクリアしたいと考えている。 同2)に関しては、「センター通り」を対象とした研究を、追調査を実施の上で論文にまとめる予定である(すでに学内の紀要にエントリーしている)。黒人街「照屋」に関しては、事業所の経営者情報を整えた上で、予察的に2016年人文地理学会大会(於:京都大学)でポスター発表する。なお、ゲート通りに関しては、店舗の配列を復原するにあたり現地調査が必要であり、夏期休暇中にフィールドワークを行ない、「センター通り」と同じ水準で論文にまとめることとしたい。また、補足的に、コザ市内におけるホテル業の立地展開と離島・周縁部出身経営者との関わりについても検討をくわえる。 同3)に関しては、平成27年度末に実施した現地調査により、事業所の経営者情報をほぼ把握することができた。同島では、2003年まで住宅地図が作成されなかったほか、米軍統治下では地図類も一切ない。したがって、まずは1970年当時の事業所立地を中心とした地図を作成し、そのうえで、サトウキビ産業以外の就業構造に関する研究をまとめる予定である。 以上の成果をふまえて、研究を総括する。
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Causes of Carryover |
昨年度の9-12月の4カ月間、学内制度の学外研究期間を利用し、沖縄市に滞在した(受入機関:沖縄市役所総務部総務課市史編集担当)。そのため、効率的なフィールドワークが可能となったほか、資料の複写・購入などに関する費用なども省かれ、次年度使用額が生じた次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度の調査にあたり、夏期休暇などの長期休暇中に実施するフィールドワークの滞在日数を当初予定よりもふやすことで使用する。
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