2015 Fiscal Year Research-status Report
ポスト社会主義国における経営主体のアントレプレナーシップに関する文化人類学的研究
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26370939
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
後藤 正憲 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 共同研究員 (70435949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辛嶋 博善 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 地域比較共同研究員 (60516805)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アントレプレナーシップ / ポスト社会主義 / 農業 / 牧畜 / 文化人類学 / ロシア / モンゴル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者(後藤)、分担者(辛嶋)とも、それぞれ前年度のフィールドワークを継続する中で、特にこれまで取り扱ってきたミクロの事象と、一方で地域を超えたグローバル市場に通じるマクロの状況との関係に注意を払いながら、調査を行った。また、それぞれ国内外の会合に積極的に参加して、現段階での研究成果を報告した。 まずフィールドワークの状況について。後藤は、2015年12月にロシアのチュヴァシ共和国チェボクサルィで農業協同組合の代表者を含む経営主体と面談し、また複数の地区にわたって自営農家を訪ね、その起業実態について調査を行った。辛嶋は、2015年8月から9月にかけて、モンゴル国東部ヘンティー県の県庁所在地チンギス(旧称ウンドゥルハーン)、牧畜地域であるムルン郡において、牧畜民からの聞き取り調査を行った。また、モンゴル国中部のバヤンホンゴル県の県庁所在地バヤンホンゴルにおいて、市場に関する予備的調査を行った。 研究成果報告に関して、後藤は2015年8月に行われた第9回国際中・東欧研究協議会(ICCEES)幕張世界大会で、本基盤研究の研究協力者である大石侑香氏(首都大学東京)の他、極北先住民の経済活動について研究の第一人者であるFlorian Stammler氏(ラップランド大学)を招いて、パネルを組織した。辛嶋は日本文化人類学会や日本モンゴル学会で、それぞれ牧畜社会の多様化について扱うパネルに参加して、主に居住形態の変容に関する報告を行った。 また、2016年2月には当基盤研究のメンバー間で意見を交換し、研究の進捗について確認するとともに、研究のネットワークをさらに広げることを目的として、メンバー外から深田淳太郎氏(三重大学)と佐久間寛氏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)の二名を招いて、「アントレプレナーシップ研究会」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者(後藤)は、本基盤研究がスタートした後に始まったフィンランドとの二国間共同研究に参画する中で、ロシア極北地域での調査が実現する向きとなったため、モスクワから極北地域にフィールドを変更して対処した。チュヴァシでの調査は従来通り行っている。分担者(辛嶋)は、当初の予定通りモンゴル国ヘンティー県で調査を遂行した。いずれも、これまでの調査で得られたミクロの事象と、グローバルな市場におけるモノや人の流れに照らしたマクロの視点を、相互参照する試みを行った。 また、国内外の研究会合に参加して、当研究成果を他の研究者に対してアピールするという目標も達成することができた。後藤がICCEES世界大会で自らパネルを組織し、辛嶋が国内学会の分科会に参加をして報告を行ったことは、いずれも研究者のネットワーク構築に向けて重要な足がかりとなった。また年度末には、メンバー外の研究者のみならず、一般の参加者をも交えてオープンな形で研究会を行うことによって、互いに研究の進捗を確かめ合うともに、研究成果を外に向けて広く発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フィールド調査については、後藤はチュヴァシ共和国とロシア極北で、辛嶋はウランバートルとヘンティー県で、それぞれデータを補足しながら最終的な調査を行う。申請段階では、後藤はモスクワとウラジオストクで調査を行う予定を立てていたが、その後に始まった研究プロジェクトとの兼ね合いで、ロシア極北の調査に参加することになったため、調査地を変更せざるを得なくなった。しかし、少なくとも2つの地域で比較分析を行うという当初の計画は変更せずに行う。 本基盤研究の最終年度に当たる今年は、過去の調査結果をまとめて総合的な分析を行うことに重点を置く。その結果はスラブ・ユーラシア研究センターの定例シンポジウムで発表するほか、平成27年度末に開いたような独自の研究会を開いて、互いの成果を確認する作業を行う。その中では、申請時に想定していたように、中央アジアやその他の旧社会主義圏をフィールドとする研究者と合同のワークショップを企画する。またそうして得られた成果を持ち寄って、何らかの形でまとまった成果物として出版する方向性を探る。
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Research Products
(8 results)