2015 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカ牧畜社会における降雨変動と紛争のメカニズム
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26370941
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文学部, 教授 (00263062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 紛争 / 降雨 / 牧畜社会 / 経済活動 / 政治状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年9月3日から21日にかけて、エチオピア国オロミア州ボラナ県にて現地調査を実施した。調査においては、まず平成26年9月からの1年間に発生した民族紛争や殺人などの記録を確認し、降雨状況の確認をした。現地で得られた降雨記録は、帰国した後、ARC2の記録と照合し、ARC2のデータの確からしさを確認する資料とした。 現地では、紛争の原因として降雨以外の理由と考えられる経済状況と政治状況の変化についてデータを収集した。経済状況については、この地域に大きな利益をもたらしている家畜の市場取引についてのデータをあつめた。その結果、ラクダの市場取引にはおおきな減少が見られ、地域に流入する資金は大きく減っていることが判明した。また政治状況については、かつて平成18年に紛争をひきおこした県境の引き直しが、ふたたび行われるのではないかという噂が存在することを確認した。これはエチオピアが、民族に基盤をおく行政区を採用したために生じる問題であり、現地では2つの民族(ボラナとグジ)の境界をめぐる紛争がふたたび生じる危険性を秘めているといえる。十分な降雨がみられた一方、経済状況および政治状況は悪化しており、紛争の危険性が高まっていることから、紛争と降雨とは統計的に有意な関連はなく、経済または政治的要因との関連があるように思われた。 現地調査のほかに、平成27年10月31日、11月1日にかけて、エチオピア国アジスアベバ市で開催された紛争に関する国際ワークショップに参加し、南部エチオピアの事例を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、当初、期待していた以上に精密なデータを収集することができている。大学の副理事となったことから、現地調査に行く日数を十分に取れなくなってしまったが、現地協力者のトレーニングをきちんとしたことと、日本から定期的にデータの取り方についてのモニタリングを行ったことから、調査は順調に進んでいる。 また研究成果の発信については、当初、予定していた国際エチオピア学会(ポーランド)への参加が、大学業務と重なり、かなわなくなってしまった。しかし、エチオピアで開かれた国際ワークショップに参加し、紛争という同じテーマをめぐって政治・経済・国際機関の働きなど、さまざまな角度から議論することができた。また、論文1本を出版することができたことから、成果の発信も順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年5月にクロアチアで開催されるIUAES(人類学・民族学国際連合)大会において発表をおこなう。また平成28年8~9月にかけて現地調査を実施しデータを収集する。とくに平成28年3月に、オロミア州全域において反政府運動が活発化したとの情報もあり、オロミア州ボラナ県だけでなく、より広い範囲において紛争の原因と発生メカニズムを探っていく。 統計的な調査についてであるが、現状においては紛争と降雨のあいだに統計的優位は認められそうにない。しかし、新たなアプローチとしてベイジアン分析をとりいれたり、より広域の、あるいはより時間的に広い範囲をとったりすることで、さらなる検討を行う。
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Causes of Carryover |
副理事としての大学業務が増えた関係で、現地調査の日数を予定よりも減らした。また国際エチオピア学会への参加を取りやめた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人類学・民族学国際連合(IUAES)大会に参加し発表するための旅費として使用する。
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