2014 Fiscal Year Research-status Report
開発・環境運動・宗教実践の交叉と動態に関する人類学的研究
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26370949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神霊祭祀 / 開発 / インド / カルナータカ州 / マンガロール / 社会運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、平成26年8月から9月にかけてと平成27年3月の二回、インド・カルナータカ州マンガロールを中心に現地調査を行った。平成26年夏の調査では、主にマンガロール経済特区と村落社会の関係に関する調査を進め、経済特区内に新設された多国籍企業の幹部らにインタビューを行った。平成27年3月の調査では、マンガロールの村落部における神霊祭祀の動態に関する調査を継続するとともに、経済特区の進出に対する反対運動において中心的な役割を担った人々へのインタビューを行った。 平成26年8月には、エストニアのタリン大学で開かれたEuropean Association of Social Anthropologists (EASA)研究大会にて、‘Spiritual infrastructure/infrastructural spirits: intimacy, danger, and distance in human-nonhuman relations in South India’ というタイトルで発表を行った。また平成26年11月には、ドイツのブレーメンで開かれた、日本学術振興会とドイツのフンボルト財団が共催する11th Japanese-German Frontiers of Science Symposium 2014に参加し、‘Spirits Meet Machines: Human-Nonhuman Entanglement in buuta Worship in South India’ というタイトルで発表を行った。 さらに、Asian Anthropology, Asian Ethnology, NatureCultureをはじめとする国際学術誌に論文を投稿し、掲載を認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の調査では、経済特区内における儀礼実践の詳しい内容や企業幹部の関わりについて、幹部自身へのインタビューによって明らかにすることができた。また、これまでは大規模開発に対する領主層の反応や対処、相互の対立関係を中心に調査を進めてきたが、新たに、反開発運動において中心的な役割を果たした指定カースト出身男性への聞き取りが実現し、反開発運動をより広い社会運動の一部として捉えなおすための足掛かりを得ることができた。さらに、国際学会での発表や国際ジャーナルへの投稿を通して、国外の研究者とのネットワークを更に拡大することができた。以上から、本研究は当初の予想以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査で築いた関係性を基に、マンガロール経済特区内と周辺村落において、大規模開発と神霊祭祀に関する調査を続行する。とくに、土地収用に関する法改正の影響について、インタビューや新聞報道の分析を通して明らかにする。また、大規模開発の影響については、地域の領主層の対応について引き続き調査を行うことに加えて、土地なし層や指定カーストとされる人々の開発への対応、ならびに神霊祭祀とのかかわりについても調査を進める。この調査を通して、大規模開発が従来のカースト間関係にどのような影響を及ぼしたのかを明らかにしたい。さらに、これまでの調査結果を刊行物にまとめる作業を進める。
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Causes of Carryover |
当初、平成27年2月から3月にかけて調査を行う予定であったが、先方(調査地の受入者)の都合により、滞在期間を短縮せざるを得なかったため、その分の助成金を使用することができず、結果として当該の助成金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、インド・カルナータカ州においてより長期の現地調査を行うとともに、数人の調査助手を雇用して、これまでに収集した文字資料と聞き取り資料の英語訳と分析を進める。この旅費と人件費・謝金として助成金を使用する予定である。
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