2015 Fiscal Year Research-status Report
開発・環境運動・宗教実践の交叉と動態に関する人類学的研究
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26370949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神霊祭祀 / 開発 / インド / カルナータカ州 / マンガロール / 社会運動 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、平成27年8月と平成28年3月の二回、インド・カルナータカ州マンガロールの村落部にて、神霊(ブータ)祭祀の実践と開発問題に関する現地調査を行った。平成27年の調査では、2000年以降における当該地域へのマンガロール経済特区の進出と、それに対する反開発運動の展開、そして政府による開発計画の取り下げに至る経緯について、マンガロール在住の社会運動家、村落社会の領主一族、元小作農民層、低カーストの運動家とのインタビューを中心に詳細な調査を行った。 平成28年の調査では、改修工事後の神霊の大社における年中儀礼を参与観察し、改修前との変化を中心に詳しい記録をとるとともに、関係者にインタビューを行った。この調査から、改修工事の計画や監督を担った管理委員会の中で、資金の調達と配分等をめぐって混乱や対立が生じており、その結果、管理委員会から疎外されてきた伝統的な領主層への支持が再び高まっていることが明らかになった。 平成27年7月には、アデレードで開催されたICAS9(The 9th International Convention of Asia Scholars)で、インドの社会運動におけるグローバルとローカル双方のアクターに焦点を当てたパネル発表を行った。また、Ethnos, NatureCultureをはじめとする国際学術誌に、マンガロールの神霊祭祀と開発、インフラストラクチャーの関係をテーマとする論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の調査では、領主層、指定カースト民、社会運動家といった多様なアクターの反開発運動への関わりと、政府による開発計画取り下げの経緯についての調査が当初の計画以上に進展した。また、マンガロール近郊の僧院や政府与党と反開発運動の関係という新たな調査対象を見出すことができた。さらに、これまでの研究成果をまとめた草稿をほぼ完成させ、平成28年度中の出版に向けてブラッシュアップする段階に至ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の調査で明らかになったこととして、マンガロール経済特区(第二フェイズ)のさらなる拡大が阻止され、反開発運動が一応の成功をみた大きな理由として、全国的に著名な高僧が開発反対を唱えて「断食」を行ったことや、指定カースト民をはじめとする低カースト層による開発反対運動が興隆し、地域社会を超える連帯が形成されたことが挙げられる。今後の調査では、僧院の関係者や低カーストの活動家へのインタビューを実施する。また、これまでの研究成果を刊行物としてまとめ、平成28年度中に出版する。
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