2017 Fiscal Year Research-status Report
開発・環境運動・宗教実践の交叉と動態に関する人類学的研究
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26370949
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インド / 神霊祭祀 / 近代化 / カルナータカ州 / 環境運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、2017年2月に刊行した著書『環世界の人類学ーー南インドにおける野生・近代・神霊祭祀』(京都大学学術出版会)の英語への翻訳作業を行った。2018年度中に英訳を完成し、出版する予定である。この翻訳作業に加えて、2017年9月と2018年3月に南インドで現地調査を行った。具体的には、2017年9月にカルナータカ州のMangaluruとUdupiにて、僧院と神霊祭祀の関係、ならびに土地保有制度に関する調査を行った。この調査を通して、1)Udupiの僧院とDakshina Kannada県マンガルール郡の農村との密接な関係、2)神霊祭祀とブラーマン的祭祀との関係、3)Udupiにおける僧院の歴史と現状、4)Udupiの宗教指導者が反開発運動において果たしてきた役割 等の事項が明らかになった。また2018年3月には、西ガーツ山脈を中心として1980年代から勃興してきた環境運動に関する調査を開始するとともに、ケーララ州で比較調査を行った。この調査を通して、西ガーツ山脈の環境保全を目指す社会運動が、現在のマンガルールにおける反開発運動といかに結びついているのかという問題について、個人史の次元から理解を深めることができた。今回の現地調査で得られた情報は、西ガーツ山脈における環境運動と宗教実践に関する新たなプロジェクトの基盤となりうる。また、2017年7月にはタイ王国のチェンマイで開催された国際学会(ICAS10)で発表し、各国の研究者と意見交換を行った。これによって形成されたネットワークを基盤として、インドでの共同研究プロジェクトを構想中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末に刊行した和文著書の英訳はすでに8割程度完了しているため、英語版は当初の予定よりもかなり早期に完成することが見込まれる。その一方で、本プロジェクトの総まとめとなる現地調査は比較的短期にとどまっているため、再度追加調査を行って事実関係の確認を行い、英語版の刊行に必要な情報を収集・整理する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
南インドのマンガルールで追加調査を行い、日本語版の著書の刊行後に生じた疑問点を解消する。同時に、ケーララ州を中心に比較調査を行い、環境運動と在来の宗教実践に関する論点を整理しなおすとともに、新たなプロジェクトの開始に向けて理論的枠組みを練り直す。具体的には、8月と9月にカルナータカ州とケーララ州で神霊祭祀と開発、環境運動に関する調査を実施する。また、環境運動に関わってきた宗教指導者、社会運動家、政治家へのインタビューを実施する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では最終年度にインド・カルナータカ州のマンガルール大学、ならびにUdupiのMGMカレッジと協力して南カナラの神霊祭祀に関する調査研究を実施する予定であった。しかし、先方の都合により2017年度中に当初の計画を実施することができなかったため、次年度にこの調査を行うことになった。次年度使用額については、2018年度にマンガルール大学、ならびにMGMカレッジの民俗学者と共同で実施する現地調査の旅費ならびに人件費・謝金として使用する計画である。
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