2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化にともなう公共空間の変容と共同体の再編に関する文化人類学的研究
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26370950
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩谷 彩子 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90469205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共空間 / グローバリゼーション / 変容 / ロマ / 移動 / ジェントリフィケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)公共空間に関する諸分野の研究動向をまとめたうえで人類学で扱う際の視座を検討し、京都人類学研究会で「インドの<道>にみる公共空間―露天商が媒介する人・もの・ローカリティ」と題して発表し、学会誌(『文化人類学』)に論文を投稿する準備を行った。 (2)対象都市での調査①パリ(フランス)、ブリュッセル(ベルギー)における移民ロマによる公共空間の利用に関する予備調査を行った。同都市では、他のEU諸国(とりわけルーマニア)から移住してきたロマが職を探したり情報交換をする場として公共空間が機能してきた。しかしパリでは公共空間から私的空間への移行が指摘できる。NGO団体FNASATを介した移民ロマの交流の場で聞き取りを行ったが、4、5年前から交流の場はもちろん、生業の機会そのものも減じられているということだった。ブリュッセルでは職探しの場として公共空間の利用が見られたが、ロマ同士のネットワークについてのデータは得られなかった。②アテネ(ギリシャ)では1960年代以降、公共空間とロマの居住空間との分離が進んでいる。スクラップ収集と古物商というふたつの生業にたずさわるロマへの聞き取りと参与観察を行い、彼らの公共空間の利用に関する予備調査を行った。③イスタンブル(トルコ)では、2000年代以降公共空間とロマの居住空間との分離が進行中である。大規模なロマの集住地であったスルクレでは、ジェントリフィケーションが完了し、跡地に建設された公営住宅はシリア難民用にあてられていた。また今まさにジェントリフィケーションが進行中のタルラバシュ地区では、デベロッパーに都市開発の全容と流入している資本についての聞き取り調査を行ったが、そこでは同地区を追い出されることになるであろうロマの処遇は考慮されておらず、近い将来大きな問題が生じることが予測され、本研究の重要性と緊急性がうかがえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の前半は、産前後休と育休のため、当初の研究計画を十全に遂行することができなかったが、後半では理論的な資料収集とフィールド調査を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
各都市における公共空間そのものの把握を進めると同時に、「ジプシー」/ロマの居住空間と生業空間がいかに公共空間と絡んで変化してきたのか、また彼らの公共空間に対する認識や場所とのつながり・情動的なコミットメントについて、さらにフィールド調査を行い把握する必要がある。
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Causes of Carryover |
平成27年度の前半は、産前産後休と育休のため、当初予定していた現地調査が実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、当初の使用計画に加えて、平成27年度に予定していた海外での調査と資料収集を実施する。
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