2016 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化にともなう公共空間の変容と共同体の再編に関する文化人類学的研究
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26370950
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩谷 彩子 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90469205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共空間 / 路上 / グローバリゼーション / もの / フロー / 移動民 / ロマ |
Outline of Annual Research Achievements |
①2016年度東京外国語大学言語研修に参加し、フィールド調査の質的向上を目指し、ヒンディー語を集中的に学習した。 ②インド、グジャラート州アフマダーバードのデヴィ・プージャックというコミュニティがたずさわる古着の売買とスクラップ収集の場に焦点を当て、それらのもののフローと人々の関わり方からインド的な公共空間のあり方を解明する研究を行った。具体的には2017年1月3日から13日まで、アフマダーバードにおける異なる市場(バドラ市場、グジャリ市場、デリー門前の路上市)、新たに作られた娯楽公共スペース(カンカリア湖)、ショッピングモール、スクラップ工場(路上で収集されるスクラップの加工先)で人とものの流れを質的・量的に調査した。UNESCO世界遺産都市への申請を目指すアフマダーバード市が再開発を進めている旧市街のバドラ市場やグジャリ市場は、空間の秩序化・均質化の方向で整備されつつあるが、その一方でそれらの空間に流れ込む商品が集まる路上市の取引形態はますます細分化し、新たなコミュニティのビジネス空間を招来していることが明らかになった。 ③②の調査結果を含めてこれまで行ってきたインドの公共空間の変容に関する研究の成果を、『文化人類学』の特集「グローバリゼーションと公共空間の変容」に投稿した。 ④「移動民族」として人種化されてきたヨーロッパのロマをとりまく人種主義の歴史的な変遷と問題について、『人種神話を解体する 第1巻 可視性と不可視性のはざまで』(斉藤綾子・竹沢泰子編)の中で「『移動民族』としてのロマと新人種主義―ヨーロッパ域内の人の移動をめぐるポリティクス」と題して執筆し、刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
短い調査期間で想像以上に多くの新たな知見を得ることができたため。またヨーロッパのロマがおかれている歴史的な文脈と現代における新たな人種主義の問題や、公共空間に関する共同研究の成果についても形になりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
・都市の公共空間のあり方の違いを比較するための方法論を検討する。 ・ヨーロッパの公共空間の歴史的な変容について、文献と現地調査の両面から明らかにする。 ・西欧近代的な都市計画がトルコ(イスタンブル)やインド(アフマダーバード)の都市計画に与えている今日的な影響について考察する。 ・公共空間を支えるコミュニティのネットワークの詳細と、そこでの情動的な人と空間の結びつきについてさらに調査を通して明らかにする。
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Causes of Carryover |
2016年9月に予定していたトルコでの現地調査が、現地の不安定な政治状況によって延期を余儀なくされたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、トルコでの現地調査の旅費に使用する予定。
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Research Products
(1 results)