2015 Fiscal Year Research-status Report
チュニジア民主化革命の展開とその諸課題をめぐる文化人類学的研究
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26370959
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
鷹木 恵子 桜美林大学, 人文学系, 教授 (60211330)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チュニジア革命 / 民主化 / プロセス・ドキュメンテーション / 市民運動 / イスラミスト / リベラル派 / 女性の活動 / 聞き取り調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の2年度目には、本務校から特別研修期間の待遇を得たことから、5月~6月と9月~10月にかけて、チュニジアで現地調査を実施した。革命から5年目に入り、自由選挙による新政権発足後の状況に関して、新たな文献収集や統計データの収集、政治家や研究者、市民活動家へのインタビュー、また一般の市民がどのように革命や革命後の状況を捉えているのか、さらに革命後の民主化過程で活発な活動を展開しているNGOなども訪れ、それらの活動の現状に関しての聞き取り調査を実施した。これらの聞き取り内容は許可を得られたものはすべて録音した。 現地調査以外の期間には、2011年から積み重ねてきた現地調査の資料や文献研究を整理・まとめる作業に集中し、その研究成果を一冊の著書として完成させるべく、その方法論や枠組みについての検討も行った。最終的にはチュニジア革命とその後の民主化過程をひとつの壮大な市民参加型での社会開発プロジェクトとみなし、それを開発学分野で採用するプロセス・ドキュメンテーションという手法を採用して、多くの聞き取り内容をも盛り込みつつ著述するという作業に専念した。章立て構成は、序論と結論を除いて、7章から成るもので、その原稿はほぼ年末までに完成させ、その後は推敲を重ね、また図表の作成などを行った。 またこの著書執筆作業の傍ら、革命後、チュニジア南部の以前からの調査地の農村でのオアシス農地紛争が起こった背景などを、政府の開発政策の歪みやそれに対する住民の感情と論理から分析考察した論文なども分担執筆著書に発表した。また大学の紀要にも、チュニジア革命と民主化過程における女性たちの活動に焦点を当てた論文を投稿し、その中では、革命後、チュニジアのフェミニズムがそれまでのトップダウン的国家フェミニズムから、女性市民による主体的な市民フェミニズムへと変化していった様相を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チュニジア革命から5年の年月が経過し、その間の紆余曲折があり、先が見通せなかったことから、革命について本を執筆することが難しかったが、2014年には新憲法が制定され、その秋には議会選挙と大統領選挙も無事に実施されて、2015年には新政権が発足してたことから、それを一つの区切りと見なし、著書の執筆作業に専念した。 今回の科研費によって実施することができた現地調査での成果も加えて、著書の原稿を完成させることができたことから、研究はおおむね順調に進展していると自ら判断し評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ完成させた著書の原稿に関しては、現在、出版社の編集者と打ち合わせ中である。 できるだけ、今年度中に研究成果として良書の刊行を目指し、校正作業などにも充分集中をして取り組みたいと考えている。また十分書ききれなかった内容に関しては、個別に論文にすることも考えている。 さらにチュニジア革命や民主化運動をより広い視野から、社会運動として捉える意味でも、目下、Valentine M. Maghadamの著書、 Globalizationand SocialMoivements: Islamism, Feminism and the Global Justice Movementの翻訳も考えている。ゆとりがあれば、その翻訳作業も進める積りである。
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