2015 Fiscal Year Research-status Report
アジア太平洋戦争の精神的後遺症に関する研究─「戦後補償」関連公文書を主資料として
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26370962
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 毅 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00454116)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医療人類学 / アジア太平洋戦争 / 戦争体験 / 心理的影響 / 戦後補償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、主に「戦後補償」関連の公文書を基本資料として、アジア太平洋戦争の精神的後遺症について医療人類学的に検証し、戦争体験の長期的な影響を社会や制度との関わりのもとで明らかにすることを目的とするものである。本年度は、1945年以前の「精神衛生」関連の公文書や対米補償申請書類にまで資料収集の範囲を広げつつ、聞き取り調査で得られたデータの整理を進め、今後の研究の方向性を固めることができた。 本年度の調査研究の主な実績は、以下の通りである。①沖縄県内・東京都内・関西地域の図書館、公文書館、行政機関、研究機関などにおいて、「戦後補償」関連の公文書ならびに関連資料を閲覧・複写申請し、多くの新資料を収集することができた。②「精神衛生」関連の資料についても、未発掘のものを含め、多くの新資料にアクセスすることができた。③沖縄の精神保健を担った関係者への聞き取り調査を実施し、重要な証言を得ることができた。④戦争体験者とその家族を対象として、戦争体験と戦後の生活史について聞き取り調査を実施し、戦争の心理的影響に関わる貴重な証言を記録することができた。⑤平成27年11月に開催された日本子ども虐待防止学会のにいがた大会における大会企画シンポジウム「戦争体験と子ども虐待~トラウマの世代間連鎖から考える」で報告し、問題意識を共有する研究者・臨床家・メディア関係者との交流を通して知見を広げることができた。 以上の調査研究を通して、アジア太平洋戦争の精神的後遺症に関する実証的研究を進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の所属機関変更に伴う繁忙のため、十分な研究時間が確保できたとはいえないが、そのような中で、おおむね順調に研究を進めることができた。中でも、「子ども虐待」に関わる学会シンポジウムへの参加などを通して研究知見の社会還元に向けた展望が拓けたことは大きな成果であった。加えて、戦前の未発掘の「精神衛生」関連行政文書を収集できたことの意義も大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の資料の根幹をなす公文書が多数保管されている沖縄県公文書館での資料調査は、平成28年度前半で終了する予定である。平成28年度は、収集事例の整理と聞き取りのテープ起こしを進め、遠隔地での調査を実施する。本年度中に、研究成果の一部を学会誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関の変更に伴う急な研究環境の変化と繁忙により、平成27年度に予定していた遠隔地での調査出張や研究補助業務の一部が実施できず、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このため、予定していた遠隔地での調査や研究補助業務は次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(1 results)