2015 Fiscal Year Research-status Report
サンテリーア信仰をめぐるグローバル化と実践コミュニティに関する文化人類学的研究
Project/Area Number |
26370964
|
Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
井上 大介 創価大学, 文学部, 准教授 (20511299)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | サンテリーア / イファー信仰 / 呪術 / アフリカ系キューバ宗教 / エグベ / グローバリゼーション / 実践コミュニティ / キューバ |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の「研究目的」はキューバにおけるサンテリーア信仰とよばれる宗教習俗がナショナリズムやグローバリゼーションの影響によってどのように変容しつつあるのか、また実践コミュニティという特徴とどう結びついているのかという点について解明することにあり、特に2014年はナショナリズムとの関係で調査を展開した。2015年度はごろーばリゼーションとの関係を念頭に3月1日より3月21日までキューバ・ハバナ市にてフィールド調査を行った。またキューバの心理学・社会学研究所の研究者と情報交換をおこなった。フィールド調査では、ハバナ市およびその周辺にあるエグベと呼ばれる結社7か所を訪問し、参与観察、インタビューを行うとともに、それぞれの集団から必要な資料をデータによって提供してもらった。以上を通じ、以下の成果を得ることができた。 ①キューバのサンテリーア信仰をめぐる動向では、サンテリーア・イファ信仰とよばれるカテゴリーにおいて、国民文化に接合されゆくグループとそれらとは距離をとり、アフリカ回帰的傾向を示すグループが存在し、双方がそれぞれをけん制しあうといった特徴が看守できた。また学術者などがそのような動向に関与しつつ、多様なアフリカ系キューバ宗教を国民文化の枠組みに包摂しようとの動きもみられている。 ②国民文化に接合されつつある集団においては、社会運動や慈善事業、芸術活動などを強調する。 ③アフリカ回帰主義的グループにおいては、グローバル化社会における人、もの、情報の加速度的な移動により、アフリカ的影響を自らの宗教実践に積極的に取りいれる傾向にあり、アフリカ産の薬草の使用、アフリカでのみ存在する慣習や儀礼の使用などにより自らの宗教的純粋性、正当性を本質主義的に主張する傾向にある。 こうした傾向は近年のものであり、まだあまり研究がなされていないため、本調査の成果は学術的に価値が高いものと考えられよう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では、サンテリーア信仰と呼ばれる宗教実践を①ナショナリズム ②グローバリゼーション ③実践コミュニティという3つの角度で考察する予定であるが、過去2年の調査機関において、①および②についてまとめることができている。最終年にあたる本年に③について検証できれば、本課題の研究目的を達成することとなる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年は、1か月間のキューバでの調査を予定している。現地では、実践コミュニティという角度から、できればひとつの集団に的をしぼり、長期の観察を通じ、彼らの人間関係や宗教実践の身体化などに注目して調査を行う予定である。仮説としては、彼らの宗教実践が、実践コミュニティとして社会変革の原動力となる可能性を秘めているという点である。
|
Causes of Carryover |
2015年度は所属大学において、日本宗教学会学術大会を開催したため、8月にキューバでのフィールド調査ができなかったため、計画通りの資金運用が不可能となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は2017年3月にキューバでのフィールド調査を実施するが、これまで以上にキューバ国内の主要都市での調査を予定しており、これまで以上の支出が予想されている。そのため、繰越金及び本年度の基金を全て使用することとなる。
|