2016 Fiscal Year Research-status Report
サンテリーア信仰をめぐるグローバル化と実践コミュニティに関する文化人類学的研究
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26370964
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
井上 大介 創価大学, 文学部, 教授 (20511299)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サンテリーア / レグラ・デ・オチャ / イファ / 実践コミュニティ / キューバ / 呪術信仰 / グローバリゼーション / 宗教的正統性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年、2016年、2017年の現地調査で論文執筆が完了した。しかし査読結果でいま不採択となっている。理由は本研究で依拠した「実践コミュニティ」理論の新しい方向性が提示されていないというものであった。報告者としては、理論の新しい方向性の発見というよりは、同理論のキューバでの援用を意識していたため、理論的な新しさの発見という課題に十分留意できていなかった。今後は、「実践コミュニティ」理論をさらに発展させるべく、これまでの研究内容を精緻化し、理論的貢献に従事したい。 なおこれまでの研究内容としては、まず先行研究により①キューバにおけるサンテリーア信仰は大西洋奴隷貿易を契機としてアフリカからの奴隷によってキューバに定着し、実践コミュニティ的土壌によって発展してきた ②同発展過程においては、政府の文化政策(アフリカ系文化に対しその芸術的側面をナショナル文化に吸収する一方で、宗教的側面を排除する)により社会的抑圧の対象となり、実践者は秘密裡に信仰を継承してきたという点を確認した。 またフィールド調査により ③1990年代の政府による宗教政策の転換により、これまで秘密裡で実践されてきた同宗教実践が社会空間において顕在化することとなった ④そのような背景のもと、政府のサポートによりナショナル文化を意識したサンテリーア信仰の組織「ヨルバ文化協会」が宗教法人格を得る形で設立されるとともに、従来家族的紐帯をベースとして発展してきた同宗教の性質が変容しつつある ⑤ヨルバ文化協会は宗教とともに、舞踊など芸術活動を全面にその活動を展開しつつある一方、そのような動向に反するグループがアフリカ回帰主義的傾向を強め、宗教的正統性をめぐりヨルバ文化協会と対立するに至っている。 研究ではこのような宗教的権威をめぐる対立がグローバル化社会の中で、ナショナル文化とローカル文化のせめぎあいとして考察されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年4月より2017年2月まで、アメリカ・ニューヨークにおいて在外研究をおこない、その間、経理上の理由により、キューバでの調査が実施できなかった。在外研究中は所属学会での研究発表(日本)もできない状況であった。在外研究中は、本科研テーマのアメリカでの現状(キューバで発展したサンテリーアがアメリカ社会でどのように発展しているのか)の把握に従事したが、科研それ自体の研究テーマについては、深めることが出来なかった。 2015年までの研究内容は、論文の形で執筆し、投稿できたのもの、査読によって理論的貢献度に疑問が投げかけられ、不採択となっている。これらの状況から、当初の計画が若干遅れる結果となっており、今回は研究期間を1年延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、すでに執筆した論文の内容を、これまで行ったフィールド調査の内容と照らし合わせながら整理しつつ、理論的な内容についてさらに検討を加え、論文掲載をめざしたい。また本年度にもキューバでのフィールド調査を行い、研究内容をさらに精緻なものとしたい。
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Causes of Carryover |
2016年4月より2017年2月まで、在外研究でアメリカ・ニューヨークのコロンビア大学に滞在したため、経理上の理由により、当初2016年8月に予定していた科研費によるキューバでのフィールド調査を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年8月にキューバでのフィールド調査を実施する。
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