2017 Fiscal Year Annual Research Report
Cultural Anthropological Research on Community of Practice in the Santeria Cult
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26370964
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
井上 大介 創価大学, 文学部, 教授 (20511299)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サンテリーア / キューバ / 実践コミュニティ / 呪術 / グローバル化 / レグラ・デ・オチャ / イファ信仰 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年3月および2018年3月に実施したハバナでのフィールド・ワークに基づき、「キューバにおけるレグラ・デ・オチャ―イファ信仰の権威と正統性―実践コミュニティとしての民衆宗教の変容を題材として―」「キューバにおけるヨルバ系宗教のアフリカ回帰主義的動向とその多様性」という2本の論文が完成した。以下は同論文の要旨を記載し、実績の概要としたい。まず一本目の論文は、グローバル化社会における民衆宗教という事象をヘゲモニー、実践コミュニティというテーマで考察している。具体的には、キューバにおいて、グローバル化に影響された国内外の諸変化により、政府の宗教政策が変化し、それまで抑圧の対象とされてきたヨルバ系宗教など民衆宗教的実践が社会の中で顕在化したと共に、政府の影響に基づいたヨルバ文化協会を代表とする組織化の流れが進展し、本来の家族的紐帯に基づいた実践コミュニティ的宗教文化の形体が変容しつつある点について述べた。 2本目の論文では、そのような政府よりの組織化の流れに対し、アフリカ回帰主義的動向が顕在化しているという現象について論じた。 ヨルバ文化協会が、キューバ国民文化の体現者として社会的、宗教的正統性をもとにその影響力を拡大しつつある一方で、アフリカ回帰主義者たちは、自らの信仰においてアフリカ的要素を「本質主義的」に解釈し、それとの接合により、自身の信仰をより正統的なものとする傾向が確認された。 しかし同時に、アフリカ回帰主義的傾向をもつ彼(彼女)らのアイデンティティは、自らの実践がいずれにしてもキューバの伝統に関連したものであり、自らもクリオージョ派であることを完全に否定できないといったジレンマの中で揺れ動いていたのである。こうした点は、実践コミュニティにおけるアイデンティフィケーションの流動性と符合する特徴となっていたのである。
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