2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26370971
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Research Institution | Ibaraki Christian University |
Principal Investigator |
鈴木 晋介 茨城キリスト教大学, 文学部, 助教 (30573175)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地域振興 / ローカリティ / 文化人類学 / 民族誌 / 伝統野菜 |
Outline of Annual Research Achievements |
「伝統野菜」復興の動きは行政が中心となるものから地元有志の小さな営みまで、我が国において広範な拡がりを続けている。本研究の目的はこの現代的な社会事象の全体像の把握ならびに個々の取り組み実践事例と地域振興の関わりを分析し、首都圏一極集中から地方の時代へという時局の潮流の中における新たなローカリティ創造の姿形を人類学的に抉出することを試みるものである。2015年度は、伝統野菜復興の取り組みの実践事例調査を茨城県(2015年7月、10月、2016年3月)、群馬県(2015年8月)、新潟県(2015年8月)の3県・計7回実施し、伝統野菜のエスノグラフィー作成のための一次資料収集に大きな進捗をみた。とくに茨城県においては、農家、市中の有志、行政、さらに大学や農業高校を中心とする教育機関によるネットワーク形成と在来品種の掘り起こしの連動の実態に関して詳細なデータ蓄積がなされた。茨城県内での調査成果は本プロジェクトの成果公表を行うホームページ上に「フィールド・レポート」(「里川カボチャと紡がれるひとのネットワーク(前編)」2016年2月、「里川カボチャと紡がれるひとのネットワーク(後編)」2016年3月)として掲載した。 ここまでの現地調査で得たデータ分析を通じ、伝統野菜復興の動きに看取される以下の3点を研究上の要点として挙げることができる。伝統野菜の復興の取り組みが、(1)ポスト生産主義下(1990年代以降)における新規付加価値創造(所謂ブランド化)という表面上の性格にとどまらないこと、(2)根底に「野菜」(あるいは「風土」)とひととが織りなす生の営み(それは民俗的知と通底し、それを賦活する)の水準を擁すること、(3)この(2)の水準からの折り返しとしてこの動きが現代社会に対する批判的実践としての性質を強く有するということ、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の二つの柱、(1)伝統野菜復興ムーヴメントの全体像の把握と(2)エスノグラフィー作成のための一次資料収集のうち、前者に関してデータ整理に遅れが生じている。これは主として当該の新規事象が陸続と現れつづけていることに起因している。最終的な成果公表時には、時期的な部分を区切って対応していくことになる。また、研究代表者の所属異動(2015年4月)のため、教育・研究活動全体に占める当プロジェクトの実質的なエフォート率のいくらかの低下が避けられなかった点も進捗の遅れに作用している。ただし、異動直後より、所属機関周辺でのフィールドワーク(そのための人的ネットワーク形成)に取り組んだため、エスノグラフィー作成のための一次資料収集に関しては、順調に展開することができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
3カ年計画の最終年度を迎えるにあたり、本年度前半(2016年9月まで)はこれまでのフィールドワークの成果をふまえた補足的調査の遂行、データベース作成のためのデータ収集の継続を行っていく。また後半(2016年10月~)は最終的な成果公表のとりまとめに向けてデータ整理と論文執筆作業を中心に据える。なお、中間的な総括の意味での論文執筆を本年度早い段階で行い公表する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額161,321円は、主として、研究代表者本人の所属機関移動に伴いやむを得ず国内調査回数を減らさざるを得なかったために生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究遂行上必要な国内調査旅費として充当する。
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Research Products
(2 results)