2014 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における葬儀からみた「人」のあり方に関する社会人類学的研究
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26370972
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田村 和彦 福岡大学, 人文学部, 准教授 (60412566)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 死生学 / 中国研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の本年度は、おもに、葬儀を通じて具現化される政府の公式な見解における「人」の在り方を検討するために、以下の作業をおこなった。 1)著名な人物の葬儀に関する情報を収集し、そこで人物がどのように形容されてきたのかを文献から検討するための基礎作業をおこなった。具体的には新聞資料の収集、インターネット上の葬儀のニュースの閲覧・保存、個別の葬儀の文字記録(追悼文や弔辞など)を著作から収集した。 2)中国の殯儀館(追悼式会場兼火葬場)職員のうち、直接追悼儀式に携わる司会、会場設営を担当する人物を中心に、座談会を開き、近年の葬儀に関する意見交換をおこなった。とくに、追悼儀式における「人」の形容のあり方と、故人の生前を演出する際に留意している点、近年の変化などを中心に意見を収集した。 1)の作業からは、民政局を中心に刊行される追悼会のマニュアルで強調される国家と個人を直面させるような関係性が確認でき、追悼儀式の導入以降一貫して志向されてきた「あるべき」人物像が継続していることが確認できた。著名人の死に際して、すくなくとも、メディア上では、故人の死を顕彰するための文法として、未だに追悼儀式の基本的モチーフが有用であると考えられる。他方で、2)の作業、これはおもに一般の人々の葬儀に関するレベルの作業となるが、1)とは異なる側面、とりわけ、「家族」や「孝」などの紐帯が近年強調されていると、殯儀館職員には受け止められていることを確認した。ただし、職員たちの認識する「伝統的」な価値が、過去のそれと同様であるかは更なる検討を要する。 これらの資料を基に仮説モデルを構築し、次年度以降の本調査では、実際の追悼儀式における演出に参加するとともに、すでに退職した職員らへのインタビューを中心に近過去の追悼会を再構成し、その比較から、近年の変化について検討するものとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した事前調査および考察枠組みの構築を、順調に行うことができたため、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、予定通り、夏季、冬季におこなう現地調査を中心に、国内の研究機関における文献資料調査とあわせて、作業の全体像を描いている。ただし、冬季に調査予定の施設については、交渉が難航しており、結果によっては、研究に影響ない範囲で、第2候補の施設への変更も視野に入れた調整が生じる可能性もある。
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Causes of Carryover |
研究計画時に予定していた国内研究施設への資料閲覧が実施できなかったため(当該施設が夏季にマイクロフィルム閲覧機の調整をおこなったため使用できなかった)、旅費に差額が発生した。 また、座談会に集まっていただいた人々が公務待遇であったため、謝金を支払うことができなかったため、謝金に差異が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度閲覧できなかった資料は、マイクロフィルム閲覧機の調整が終了したとのことから、2015年度に閲覧することとし、そのための旅費として2015年度に使用する予定である。
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