2015 Fiscal Year Research-status Report
現代中国における葬儀からみた「人」のあり方に関する社会人類学的研究
Project/Area Number |
26370972
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
田村 和彦 福岡大学, 人文学部, 教授 (60412566)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 文化人類学 / 死生学 / 中国研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は研究2年目にあたり、昨年予備調査をおこなった施設およびメールで申し込みをしていた施設への調査をおこなった。具体的には、2015年9月に陝西省中部地方都市に所在する殯儀館、2016年3月に江蘇省の殯儀館にて調査をおこなった。 主な内容としては、実際の葬儀(「追悼会」)のなかで、遺族がどのように故人を表象することを欲し、従業員によって故人がどのように演出されているのかを調査した。その結果、近年では、国家・社会とのかかわりが重視されたかつての「追悼会」とは様相を異にしており、遺族からは(新たに構築されつつある、過去のそれよりも小規模な)「家族」とのかかわりに関心が寄せられ、葬儀施設従業員からは過去の儒教的な用語を運用することで、新たな「孝行」の概念が形成されつつある(たとえば、「二十四孝」のうち幾人かの人物、行いを取捨することで「現代版二十四孝」を創造するなど)状況を明らかにできた。 最終年に向けて、考察すべき焦点を明らかにする調査データが得られたことから、本年の研究は順調に進んだと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記述した理由により、「おおむね順調に進展している」と評価した。ただし、文献資料の収集が、計画当初よりも若干遅れているため、計画以上の進展とは言えないと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年には、現地調査の補足および分析枠組みの修正のために、夏季に本年の中心的調査地にてフィールドワークおこなう。加えて、遅れ気味であった、文献による死者表象の作業に注力する。 また、最終的な成果を提出するために、現在までの研究で得られたデータ、分析枠組みについて、中国における類似の関心を持つ研究者との議論、交流による洗練をめざすため、そのために、中国で行われる文化人類学、民俗学に関するシンポジウムに参加する予定である。
|
Causes of Carryover |
中国で複写予定であった資料のうち、一部が新たに外国人に対して複写不可となったため、その分が使用されず、代替措置として次年度に関連する資料集の購入に切り替える必要が生じた。また、研究計画当初予定していなかった、国立民族学博物館への、中国少数民族の葬送儀礼の資料閲覧に出張したため、この費用について当初支出の予定では計上していない出張が加わった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画として、複写が不可となった行政文書については、筆写および関連する葬儀施設の資料集購入によって補完する予定である。資料についてはすでに実見しており、最終年度の調査の際に当該施設を訪問した折に、購入についての承諾を得ている。
|