2014 Fiscal Year Research-status Report
「弱者家族」の司法アクセスに関する日・英・加比較研究‐仲介者による支援の視点から
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26380004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田巻 帝子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80251784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 司法アクセス / 弱者家族 / 国際情報交換 / 英国 / カナダ / 仲介者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は当科研費助成採択を受ける前から決まっていた在外研修で4月~8月に英国カーディフ大学の客員研究員として滞在していたため、英国で実現可能な本研究課題に関する基礎的な情報収集並びに関連する国際学会等への参加による情報収集・他の研究者らとの意見交換を主たる活動として行った。英国に滞在中の利点を生かし、同国で開催された「法、ジェンダー及びセクシャリティに関する法社会学的研究」セミナー(2014年5月19日、ロンドン大学高等法学研究所)、司法アクセス・法的サービスに関する国際学会(2014年6月19~20日、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ)及び第6回法曹倫理国際学会(2014年7月10~12日、シティユニバーシティロンドン大学)に参加した。とりわけ後者二つの国際学会では、本研究課題の比較研究対象とするカナダの関係者と意見交換ができたことも有意義であり、また初めて出会う研究者との交流を含め新たなネットワークを構築することができた。 本研究課題がこれまで法・社会制度の主たる対象としてきた「伝統的家族」の枠に当てはまらない多様な形の「家族」目を向け、とりわけ「弱者vulnaerable people」とされる人々とその家族(「弱者家族」と表記)が家事紛争全般の当事者となった場合の司法アクセスの現状と課題を把握することを目的としていることから、英国における一つの具体的な事例として養子収養の問題(特に同性カップル間における)をとりあげ、カーディフ大学のDoughty氏の支援を受け、公的及び各種民間機関の養子収養実務と現状ならびに課題について4件の現地訪問調査を行い、また当事者カップルに対する聞き取り調査も行った。養子に関する法改正等がなされた過渡期でもあり、関係機関の連携が促進されている一方で同じ国内でもイングランドとウェールズの実務や実状は異なっていること等の知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択を受けた時点で(初年度にあたる)2014年度の前半は英国に滞在することにしていたため、本研究課題以外の研究と両立させる形で学会等への参加や現地調査のごく一部を通して情報及び基礎知識の収集を限定的に行うにとどまった。 また、当初予定していた研究計画のうち、<日本における「弱者家族」の実態調査>が手つかずである。これは帰国後の年度後半においては在外研修中の前期分を含めた一年度分の講義を担当するなど、研究業務以外に特に教育業務に時間を要することもあり、この国内の訪問調査はもとより基礎的な文献調査も滞ったことが理由として挙げられる。但し、英国で既存のネットワークの強化や新たなネットワークの構築をはかることができた点から、今後の進展に期待できる面も残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は国内の実態調査を行うための設計をし直すことから始め、関係者や協力者をリストアップし、訪問調査や通信による調査などの計画を立てて順次実行することとする。特に、単独で調査を行うことの時間的労力的限界に照らし、関係機関への仲介者や調査協力者をあたり、事情が許す限りの協力を得て調査を実施する予定である。例として昨年に日本家族<社会と法>学会において紹介をうけた社会的包摂サポートセンターなど、既にこちらからの連絡次第で対応を快諾してくれている機関や個人の当てもあり、学期中は東京など比較的近郊の訪問先における調査を行い、夏期や冬期の大学の長期休業に遠方へ赴くなど、効率的に調査を実施することを検討している。 国内以外に、昨年度に英国で意見交換を行ったカナダ・トロントの研究者や実務家(弁護士)や以前から交流のある同・アルバータの関係者に協力を依頼して、カナダにおける調査を最終年度に行うための準備も予定している。
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Causes of Carryover |
研究実績及び達成度の欄で触れたように、2014年度の国内における調査研究が未実施であったことなどが主たる理由で初年度に配分された経費の使用をすることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に年度末から2015年度始めにかけて英国での資料収集及び関係者への調査協力打ち合わせ等を行っており、引き続き次年度(2015年度)は国内における訪問並びに通信による調査を実施することで研究費を計画的に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)