2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the Normative Justifiability and Theoretical Implications of a Human Right to Democracy as a Collective Right
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26380008
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
桜井 徹 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (30222003)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グローバリゼーション / 国民国家 / シティズンシップ / 移民 / 入国管理権 / ナショナリズム / 人権 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な移民の増加に伴い、とりわけ先進諸国は、普遍的人権原理と矛盾しないかたちで、いかに移住者の権利を処遇すべきかという難題に直面している。他方で、今日、アメリカのトランプ政権に典型的なように、主権原理とネーションの自己決定権とに基づく国家の入国管理権の強硬な主張と行使が顕わになっている。《人の移動》のグローバルな活発化に直面する現代社会は、普遍的な人格と個別的なナショナル・アイデンティティとに由来する2つの矛盾する倫理的要請をいかにして調整すべきか。2019年度も引き続き、「入国管理権をはじめとする国家の主権的権力の道徳的根拠」を問い直すことによって、この課題に取り組んだ。 グローバリゼーションの進展にもかかわらず、私たちの基本的諸権利の実現にあたっては、政治的共同体の間の法的“境界線”が依然として重要であることが日々明らかになっている。私は、現代世界における法的境界線の重要性を再確認する立場から“The Borders of Law”という論文を刊行し、自由や平等への権利の実現・保障に不可欠である“法的空間”の観念に注目すべきことを強調した。さらに、法的境界線が民主的諸価値の保障に資するだけでなく、境界線の向こう側でのその実現を妨げうることに注目すべきだと唱えた。このように私は、国境線を越えて自由と平等の実現を推進するプロジェクトにとって、近代的な人権を保障する法的空間を明瞭に画定する“法の境界線”の根拠とあり方を綿密に検討することの重要性を明らかにした。
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Research Products
(6 results)