2016 Fiscal Year Research-status Report
女性幹部警察官登用とその含意-日・英・比三カ国比較の視点から
Project/Area Number |
26380015
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
吉田 如子 (原如子) 京都産業大学, 社会安全・警察学研究所, 研究員 (70533967)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 警察 / ジェンダー / 職業文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1.前年度末に依頼した南アフリカでの調査票調査の回収、調査協力者であるGopal博士の協力を得ての分析、2.日本法社会学会、および、国際社会学会での発表、3.日本の幹部警察官を対象とした面接調査による補充調査の三点を実施した。本来は、最終年度として、フィリピンでの補充調査(面接調査、学術文献、公的資料収集)を実施する予定であったが、当地で協力を得る予定だったGutierrez教授が多忙であったため、2017年度の実施を期して最終年度の延長手続をとった。 1.南アフリカでの調査票調査について、最終的には予定通り、Kwazulu-Natal大学Gopal博士の協力を得て、30通の調査票を回収することができた。集計した後、南アフリカ警察より提供を受けた学術文献や公的資料、および、昨年度の訪問等を通して知己を得た警察研究者や警察官よりメールを通じて知見を収集し、それらを参考に分析を行った。 2.日本法社会学会、国際社会学会では、日本において実施した調査票調査の結果および分析を発表した。特に国際社会学会においてはその場のディスカッションを通して各国の警察研究者からの様々な知見を得たことに加え、知己を得た研究者からはその後も様々なフィードバックや資料を得ることができた。また、国際社会学会で渡欧した機会を利用し、英国に渡航し、Loughborough大学のMaddrell博士の助言等を参考に、ロンドン大学LSEの図書館などにおいて、英国政府刊行物や関連学術資料を収集した。 3.日本において実施済みの調査票調査の分析を深化させ、大規模県警察と小規模県警察の差異を理解するために、日本の比較的小規模の県警察に所属する警部以上の階級の幹部警察官8名に、女性登用に関する警察官の意見、今後の見通し等について面接調査を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、女性警察官の幹部階級への登用を促進し、あるいは、妨げている様々な要因を、文献収集、面接調査、調査票調査を通して明らかにすることを目的としている。本年度は、南アフリカ、フィリピン、日本での調査を全て終了させ、学会発表等を通して調査結果を多角的に分析し、成果発表を実施する予定であった。 1.南アフリカについては、調査票を回収し、調査結果の分析、関連文献や公的資料の収集は、予定通り実施できたが、現地における面接調査については、様々な地区を移動して行う必要があり、かなり困難とのGopal博士の助言を受け、実際にはEメールによって実施した。 2.日本については、昨年度日本において実施した男女幹部警察官を対象とした調査票調査結果をより深く分析するための面接調査、および、小規模県警察での調査票調査を予定していたが、まず、面接調査を小規模県警察の幹部警察官を対象として実施した。調査票調査については現在も計画中である。 3.国内・国際学会での発表、参加者とのディスカッションを通した多角的な分析、また、その機会に知己を得た各国の研究者からのフィードバックの獲得等は充分に行うことができた。加えて、南アフリカと同様、英国警察の影響の強い香港の警察研究者の知己を得、香港警察における女性登用についての学術資料等を収集することができ、さらなる比較対象を得たばかりか、南アフリカ警察についての理解を更に深めることができた。 以上の通り、南アフリカ、日本での調査はほぼ予定通り終了することができた。 しかしながら、フィリピンで予定していた補充調査については、フィリピン国立大学のGutierrez教授が多忙であったため、本年度は実施できず、来年度に実施する予定である。この理由から年度延長は行ったものの、ほぼ予定通りに進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究の最終年度として、フィリピンでの補充調査を終了させ、学術雑誌等における成果発表を行う予定である。 1.フィリピンにおける調査は、Gutierrez教授が比較的多忙でない、7月あるいは9月に渡航し、確実に資料を収集する。Gutierrez教授より、本年度は昨年度ほど多忙ではないとの連絡を受けているが、もし、Gutierrez教授が依然として多忙であれば、前回の調査票調査、面接調査の際に知己を得た警察官の協力を得られるよう、連絡済みである。 2.日本の小規模県警察における調査票調査の実施が困難な理由の一つとしては、女性幹部警察官があまりにも少数であることからくる、匿名性保持の困難が挙げられる。そこで実施が極めて難しいと判明した時点で、前回実施した県警察とは地域が異なる警察に依頼し、県警察の規模ではなく、地域性に着目した比較を目的とした調査に変更する。 以上2点の注意点を踏まえ、確実に調査を実施し、学術誌等への投稿による成果発表を行うことを目的とする。
|
Causes of Carryover |
既に、日、比、南アにおいて、女性幹部警察官を対象とした調査票調査および面接調査を実施したが、ジェンダーの視点からの分析を深めるため比国での補充調査が必要である。調査対象、方法は決定しているが、比国における研究協力者Gutierrez教授が現在比社会学学会の理事長を務めているため、調査への協力に時間的な余裕が必要とのことから、補助事業機関の延長を申請したい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
フィリピンに渡航し、フィリピン国立大学のGutierrez教授の協力を得て、フィリピンで初年度に実施した調査票調査、および、面接調査結果分析の助けとなる学術資料、公的資料を収集し、本研究計画で予定していた調査を終了する。
|