2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Order of Liberty and Co-operation in Risk Society
Project/Area Number |
26380020
|
Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
野崎 亜紀子 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (50382370)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究科, 教授 (40281779)
川瀬 貴之 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (90612193)
嶋津 格 千葉大学, 法政経学部, 名誉教授 (60170932)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | リスク / 非自律的個人 / 臨床研究 / リバタリアン・パターナリズム / 安心・安全 / 自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、リスク社会における個人像としてリベラリズムが想定する自律的な個人像ではない非自律的個人像を想定した社会理論の可能性を検討した。対象としたリスクは発生率不明のリスクである。 研究に当たっては、リスク概念(発生率覚知の有無)と対処法(保険と公共政策)を整理した上で、グローバル・ジャスティスが採用する正義原理の観点から、米国における議論(ベルモントレポート)を検討し、そこにおけるリスクの位置づけ(再分配)の在り方として、強制力・社会的相互依存・制度と愛着の結合を鍵概念として提示した。また同じく具体的検討として、生殖補助技術利用、とりわけ将来世代に影響を及ぼす生殖細胞研究の規律について、この「未知の帰結」の実践への規律の正当化とリスクの関係形成のために、専門智の醸成と他者承認の概念を提示した。 これら具体的な課題検討を踏まえて、ここからリバタリアン・パターナリズムが取り組む制度的アーキテクチャーによる規律のあり方とその理論に検討を加えた。合理的な人間像と非合理的な人間像とを前提するリスク社会において、リスクに関わる制度設計を構築するにあたり、これらをを支える(正当化/正統化)を図るベストマッチングな理論構築の可能性を探究した。この検討から特に、進化論的最適化を志向する限定合理性学派とリバタリアン・パターナリズムとの対比関係の解明の必要性を明らかにした。 さらに、安全と区別された安心(不安)がもつ集団性・集合性(しかし個人個人でその感じ方が異なる)に着目し、集合的概念を正義論の俎上で検討する必要性とともに、仏教やストア派哲学で追求された個人の心の持ち方を変えるという方向性についても、なお検討すべき課題があることを示した。
|
Research Products
(17 results)