2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 辰哉 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (90431428)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公的規制 / 原子力発電 / 市場化 / 安全規制 / 料金規制 / フランス / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスは電力構成に占める原発の存在感が世界的に見ても際立って高い.そうしたなかにあっても,EUにおける電力・ガスなどの公益事業分野における市場化を具体化する各種の指令を受けて,原発を取りまく法環境は大きく様変わりしている. 今のところ,電力価格に対する規制は強力であり,市場における巨人ともいえるEDF(政府が過半数の株式を所有)は,持ち株会社を頂点とする分社化によってEUの指令に対応し,そのことによって,ここ30年程度は電源構成に占める割合を50%は維持する政策を採用している.これは,一見するとEUの公益事業における市場化の要求と齟齬があるように思われるが,なぜこうした事態が存続できているのか不明である. 市場競争に曝された電力会社は,原発を維持し続けるうえで,保守・安全管理に必要な資金を調達できるのか,といった疑問(市場競争に曝された財・サービスと政府規制による安全確保との法律問題)が,発送電分離と電力・ガス分野における小売市場の開放,料金規制の緩和が現実のものとなっている日本においても関心事であり,この研究プランの関心事項である. フランスの文脈に即してみれば,この問題は,EUによる競争自由・市場化を志向する法規制とフランス国内法との接合のあり方,各種市場(発電市場,配・送電市場,小売市場)における競争政策,そして,料金規制のあり方,その背後にある競争による果実と安全コストの負担のあり方との調整のあり方が問われることになる. 財・サービスの特性を踏まえれば,公的規制のあり方を考える一つの素材として,原子力発電をめぐる各種規制は,それ以外の財・サービスの公的規制との比較対象となり得ることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本法の研究については,タクシー事業における公的規制の実施に起因する下級審判決が蓄積しておりそれらの分析の結果,そして,労働安全分野(とりわけ,アスベストを使用した工場)における公的規制のあり方が問われた最高裁判決の分析の結果などが近々,公表される予定である. フランス法の研究については,公的規制と対峙する諸個人の法益として「営業の自由」と「競争の自由」があるが,それら法益の意義についての分析結果が近々,公表される予定である. ドイツ法研究については,経済監督と警察規制の関係を中心に検討が進められている.EUについては,フランス法およびドイツ法研究のなかで見えてきた規制政策の内容もあるが,いまだ部分的にしか明らかになっていない状況にある.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度より始動する,髙木光(研究者代表)「持続可能な公共財としての原子力法システムの可能性」(基盤A)に参加する.原子力法における市場競争と施設の安全との交錯に関する法的問題(「研究実績」で言及した項目)を明らかにする予定である. その他,昨年度より進めていた研究の成果を着実に今年度には公表する予定である. また,今年度の後半には,英独仏を中心とした面接調査を実施する予定である.この調査が意義あるものになるよう,引き続き文献調査を行う予定である.
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