2014 Fiscal Year Research-status Report
地域共同体と域外国の租税関係に関する法政策学的研究
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26380028
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川端 康之 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (70224839)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | BEPS / 税源侵食 / 利益移転 / 国際課税 / 租税条約 / 文書化 / 情報交換 / 国際租税法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は3年間の研究期間の第1年度に当たるため、従来の研究以降の近時の動向調査・資料調査を行うことに力点を置いた。まず、近時の動向については、OECDのいわゆるBEPSプロジェクトが進行中であり、OECD加盟国各国での議論の動向、とくに欧州各国の研究者の動向を重点的に調査した。そのため、2014年5月末にイスタンブールで開催されたEuropea Association of Tax Law Professors年次大会、同年10月にムンバイで開催されたInternational Fiscal Association年次大会に出席し、年次大会に出席している欧州委員会租税関税総局やOECD租税委員会事務局のスタッフや若干の国の財務当局、大学研究者との間で情報交換、意見交換を行った。これらの調査において把握できたことは、近時の各国の租税政策やOECD・欧州委員会の政策形成は、税制のうち個別的論点を独立して取り上げ利害関係を調整するというよりは、多国籍企業に関わる各国の国際課税関係制度を総合してパッケージとして調整する、という方向にあるということである。つまり、従来であれば、タックス・ヘイブン対策税制、移転価格税制、とそれぞれの枠内での議論にとどまっていた政策検討が、移転価格の文脈においてもタックス・ヘイブン対策税制の実効性が問題となったり、移転価格税制上の文書化要件とタックス・ヘイブン対策税制の関係、あるいは課税当局間の情報交換が問題とされる、といったような傾向である。そのため、個別税制の内在的な論理と、パッケージとしての対応策のなかでの位置づけに基づく論理の調整が必要とされているように観察された。 BEPSはあくまでOECDのプロジェクトではあるが、すでに我が国でもその詳細が報じられ、政策当局も対応に動き出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の全体計画と比べてみると、本年度の研究活動は、概ね計画どおりに進行していると考えられる。なぜなら、当初の計画において示したように、研究期間の初期段階では、現状把握、従来の研究との隙間の充填など、今後の研究活動への準備が初年度の最重要課題であるが、今年度は、現実の調査研究活動もそのように推移したためである。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、第1年度に引き続き、政策動向を中心に情報収集分析を進める。また、今日の国際税制の基盤となった、1920年代~30年代の国際商工会議所や国際連盟での資料の収集、議論の整理を進める。 また、昨年夏にはOECDモデル租税条約が改訂されたので、第2年度前半には、その日本語仮訳を刊行し、本研究による社会貢献を進める。 第1年度はそのような我が国の政策当局の検討動向については知ることができなかったが、すでに文書化などの国内法制の改正などが具体化しているようであり、第2年度はこのような点についても情報収集を行い、他の加盟国での政策動向との比較などにより、全体像を把握するようにする。
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Causes of Carryover |
海外出張の際の航空券付加料金の上昇等に対応するために旅費について節約に務めつつ第1年度に必要な物品調達は一部を見合わせて調達したので5千円あまりの未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画に復し、計画的に支出を行う。
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Research Products
(4 results)