2015 Fiscal Year Research-status Report
地域共同体と域外国の租税関係に関する法政策学的研究
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26380028
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川端 康之 横浜国立大学, 国際社会科学研究院, 教授 (70224839)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タックス・ヘイブン / 租税条約 / 外国法人 / 非居住者 / 条約適格 / 国別報告書 / 移転価格 / 条約濫用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、OECDが公表したBEPS報告書(Base Erosion and Profit Shifting)の国別実施状況のうち、我が国の対応について、平成27年度税制改正での非居住者外国法人事業所得課税ルールの改正、平成28年度税制改正で立法化された移転価格税制の文書化(とくに、国別報告書他の共通フォーマット化)、平成29年度税制改正で予定されているタックス・ヘイブン対策税制の見直しなどをフォローし、我が国を軸に日米欧の3極間での動向を整理した。 また、それに応じて、秋には日本経済新聞社主催のBEPS関係セミナーで基調報告を行い、さらに、TMI総合法律事務所実施経済産業省委託調査において、過去2年半あまりの本研究での成果の一部として、BEPSプロジェクトをどのように位置づけるかコメントを行った。コメントの主旨は、BEPSといっても個別の論点は従来から知られていたものであって、従来はそれらを個別に検討していたところ、BEPSプロジェクトではそれらを一気通貫に制度相互間の矛盾についても配慮を加えつつ制度見直しを行おうとしている点が新しいというものであり、プロジェクトのきっかけとなった英国での「我が国の税制は100年も前の仕組みに依存している」という驚きも政治的なものであって、OECD主要国はそのような枠組みを改変しようと動いているのではなく、従来手薄であった制度相互間の一貫性確保に重点を置いていると見るべきである。 OECDがBEPS報告書を公表した後に、マスコミ報道を通じて「パナマ文書」と呼ばれるタックス・ヘイブン利用者の個別情報が大量に法律事務所から流出する、という事案が生じた。このようなセンセーショナルに報道され政治的にも影響の大きなタックス・ヘイブン関係の情報が、BEPSプロジェクトの各国での実施にどのような影響を与えるのか、注目する必要があるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の基礎調査に加えて、OECDがBEPS報告書を公表し、また、年度末にはマスコミ報道で「パナマ文書」が報じられるなど、この1年間に大きな動きがいくつかあった。 それらが、各国の政策や立法動向にどのような影響を与えるか、見極める必要があるが、具体的な動きは今後数年間に亘るものと予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
立法動向、国際機関の対応などをフォローし、歴史的調査と併せて、主要国の対外租税政策がどのような対立構造にあり、どのような調和が志向されているのかを見極める必要があり、国際学会での情報収集、国際機関の動向調査などを綿密に継続する必要がある。一方、基礎調査として、歴史的動向を1900年代初頭にまで遡り、どのような背景のもとに各国の税収配分ルールが形成されてきたかを明らかにする必要も存する。 これらは、当初の、本研究の研究計画には織り込み済みであって、新しいトピックについても同じような視点からアプローチし、情報収集を行っていくことで対応できるものと考えられる。そのため、国際学会への出席・情報収集は必須であろう。
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Research Products
(6 results)