2015 Fiscal Year Research-status Report
イギリス地方行政における「自治権」保障に対する行政争訟制度の役割に関する研究
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26380029
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長内 祐樹 金沢大学, 法学系, 准教授 (00579617)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリス地方自治法 / 行政事件訴訟 / 法律上の争訟 / 自治権 / 司法審査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度に引き続き、早稲田行政法研究会、北陸公法判例研究会、あるいは日本地方自治学会等の各種の研究会に参加し、日本における自治体が他の行政主体を被告として出訴することの理論的問題点及びその課題についての諸知見を広げることができた。 また、本年度はこうした学会・研究会への参加による知識収集に加えて、日本・イギリス両国の行政訴訟制度、とりわけ行政訴訟における司法権の意義と機能、および両国の行政訴訟における原告適格に係る本格的な検討へと進むことができた。とりわけ、イギリス行政法に関しては、Criminal Justice and Courts Act 2015(2015年刑事司法・裁判所法)の制定の際の論点となった原告適格の在り方に関して、①司法審査(judicial review)は「十分な利益sufficient interest」(最高裁判所規則53号・上位裁判所法31条3項が認められさえすれば原告適格が認められるとする従来の見解と、この見解に基づく原告適格の拡大傾向について、2015年刑事司法・裁判所法の制定過程において制限を課そうとする案が提示されたこと、②こうした議論の背景には、イギリスの行政訴訟においても行政訴訟の客観訴訟化への対応が非常に重要な事項となっている点において日本との共通点が見出しうることを見て取ることができた。 さらに、その制定過程における当初の提案とは裏腹に、③2015年刑事司法及び裁判所法は、原告適格の厳格化を断念したばかりか、公益訴訟の提起を容易にする内容の制度改正を盛り込んでおり、その意味では、結果として司法審査制度の役割の拡大が明確に打ち出される結果となっていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度の日本における自治体の出訴権に関する状況整理を踏まえ、イギリスにおける行政訴訟制度の検討に進むことができた。 特に本年度はCriminal Justice and Courts Act 2015(2015年刑事司法・裁判所法)の制定と重なったこともあり、同法に関する議論の検討を進める形で、本研究の主眼である自治体の出訴権に係る基礎的・総則的知識の収集・整理を行うことができた。 そのため、研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、まず学会や研究会への参加・文献情報の収集を通じて、本研究に関連する情報を積極的に得る。そのうえでイギリスにおける自治体の出訴権について行政法理論的側面からの検討を進める。
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